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初バトル、七月七日、七夕。 一ヶ月の間、私は数十店の神姫ショップを歩き回った。地元の茶畑が広がるような田舎では流石にショップはないので、電車で一時間、お隣の県の大都市まで足を伸ばしたり、バスで三十分揺られ最寄りの商店街をブラブラしたりした。 というのも、お兄ちゃんが買ってきた神姫、マリーは素体のままで武装やアクセサリは全く無かったからだ。私は特別バトルがしたいというわけでもなかったので、彼女が身に付けるものは彼女に選ばせようとして、彼女が気に入るものが見つかるまでいろんな店を回っていたのだった。 まずマリーはあまり実戦的ではなく、どちらかというと観賞用のウォードレスを選んだ。一応ワンピースのそれは防御力はあまり期待できないものの、フリルの可愛いディティールは全部自動迎撃用のレーザーガンで、また申し訳程度の飛行機能も付いていた。 「すごいすごい!マリーが浮いてる」 ふわふわとドレスの裾を揺らしながら彼女は私の周りを何週か回って見せた。 「便利ですわ」 彼女は私の左肩に着地した。それから私を見上げて微笑む。 彼女の笑顔は完璧、百点満点だと思った。 別の日、彼女はようやく武器を手にした。彼女は先に買ったウォードレスに合わせてその武器――ロンブレル・ロング(L ombrelle longue)を選んだようだ。 それはどうみても、日傘。日傘(L ombrelle)って名前付いてるし。武器の性能としては、ライトセーバーとライフルの能力を併せ持つハイブリッドウェポン。ライフルは威力も装弾数も実戦で使えるギリギリのレベル。まあ、早い話がこれもまた観賞用のアクセサリなのだ。 「可愛いよ、マリー」 「ありがとうございます。わたくしもこれで、いつでもバトルが出来るようになりましたわ」 マリーは傘を開いて傾きかけた日差しを遮る。淵の白いフリルが揺れた。 「え?マリーはバトルしたいの?」 左肩に座っていた彼女は私がそう問いかけると、浮き上がって私の胸前にやってきた。私が歩くのと同じ速度で移動し続ける。 「だってわたくしは武装神姫ですのよ?」 「いや、うん、そうだけど。だったらもう少し強そうな装備選んでもいいんじゃない?」 「ダメですわ。時裕様がわたくしは人形型だとおっしゃっていました。ですからわたくしは人形らしく振舞わなければいけませんの」 ああ、そういえば細かい設定は全部お兄ちゃんに任せていたな、と私はぼんやりと思い出した。神姫の性格がCSCの埋め込み方によって変わるといっても、もっと繊細なところはこちらで設定してあげなければいけないらしい。かなりめんどくさそうだったからお兄ちゃんに頼んだのだけれど、正直かなり失敗だったと思う。 「へえ、人形型なんだ」 「はい。人形型MMSノートルダムですわ」 勝手に決められたということを怒るよりも、私はやけに細かい設定に関心していた。 ノートルダムか、と考えると少しにやけてきてしまう。お兄ちゃんらしい名前の付け方だなと思ったからだ。 「でもバトルってどうやるんだろうね」 「とりあえず...ショップ設置の筐体で草バトルと呼ばれる非公式戦ですわ。」 私はふーんと鼻を鳴らしながら早速視線は最寄りの神姫ショップを探していた。 学校帰りの商店街には二店舗、神姫を扱う玩具屋があり、この近くにはそこしかバトル筐体を置いているところはなかった。 「あそこだね」 カトー模型店、商店街の長屋にあるお店としては大きいほうの店構えで、数ヶ月前に改装されたショップだ。もともと地味だった模型店がここまで立派になれるのも神姫ブームのおかげだろう。 午後五時半、私と同じように学校が終わった学生の神姫マスターたちが集まってなかなか賑やかだ。 「やあ、のどかちゃん、いらっしゃい」 「こんばんは、カトーさん」 マリーの装備を選ぶとき、最初に訪れたショップがここだった。お兄ちゃんもここの常連で、店長のカトーさんと顔見知りだということもあって、いろいろ相談に乗ってくれたのが強く記憶に残っている。カトーさんはここにないようなパーツを他の店にはあるからといって紹介してくれたりもしてくれた、いろんな意味でいい人だ。 「マリーちゃんもいらっしゃい」 「ごきげんよう、カトー様」 「ドレスモデルのウォードレスか。なかなか可愛い物を見つけたね」 マリーはスカートの裾を摘み、膝を折って行儀よくお礼をした。 「今日はお兄ちゃん、もう来ました?」 「時裕君?いや、そういえばまだ見てないなあ」 そうですか、と言って私は、私と同じ学校の学生服を着た男の子たちによってバトルが繰り広げられている筐体のほうへ視線を向けた。 お兄ちゃんは一度この店に足を踏み入れると三時間は出てこないので、もしお兄ちゃんが店にいれば、今日は止めておこうと思ったけれど、カトーさんの言葉を聞いていよいよ心臓がドキドキし始める。 「バトルかい、のどかちゃん」 カトーさんは丸い黒縁眼鏡を掛け直しながら言った。 「はい。初めてなんですけど...」 「そりゃよかった。やっぱり武装神姫はバトルが一番楽しいからねえ。次、席空けてもらうからちょっと待っててね」 そう言ってカトーさんはカウンターから出て、つかつかと盛り上がる一方の筐体のほうへ歩いていく。そして学生服の男の子たちと話始めた。 そのうち何人かが私のほうをちらっとみる。その中に同じクラスの藤井君の姿が見えたので少し手を振った。ただ私に気づいているかどうかはわからなかった。 「緊張するね、マリー」 「大丈夫ですわ。きっと」 少し経って、カトーさんは手招きで私たちを呼ぶ。私は背筋を伸ばして恐る恐る筐体へ向かい、マリーはその後を飛びながらついて来る。途中、やっと藤井君も私たちに気づいたようだった。 カトーさんの横にはこの店では珍しく、女の子が立っている。彼女もまた男の子たちと同じように私と同じ学校の制服、というか私と同じ制服を着ていた。 「丁度いい対戦相手が見つかったよ」 と言ってカトーさんは傍らの女の子の肩をぽんと叩く。 「彼女は先月神姫バトルを始めたばかりなんだ。ね、香子ちゃん」 「よ、よろしくお願いします」 その女の子は右肩に神姫を乗せたまま深々と頭を下げる。当然、彼女の右肩に座っていたジルダリアタイプの神姫は声を上げながらずり落ちた。しかしその神姫は落ちていく途中、一回転してから急に落下を止めて腕を組みながら少しずつ浮き上がっていった。 そしてそれに気づいた女の子が顔を上げて、その神姫のほうを見るまで口を尖らせ続ける。 「あ...!ごめんなさい」 「もう少しまわりに注意してくださいね、マスター」 「ごめんなさい、本当にごめんなさい」 女の子はすっかり私を忘れて彼女の神姫に謝り続ける。その様子をまわりの男の子やカトーさんがくすくすを笑った。 「も、もういいですっ。それよりみなさんが...その...見てますから...」 それが恥ずかしかったのか、女の子の神姫は少し頬を赤らめてどんどん声量を落としていった。 俯きながらちらりと私たちを見て、話を変えて、と訴える。 神姫でもそんな表情をするのか、と感心した私は急いで自己紹介をした。 「えっと、七組の月夜のどかです。こっちはマリー」 「ごきげんよう、マリー・ド・ラ・リュヌですわ」 女の子は思い出したように私たちのほうを見る。 「あ、はい、五組の斎藤香子です」 「ジルダリアのラーレです。よろしくおねがいします」 私の通う高校の一年生は、九クラス三百六十人。私は五組には一人も友達がいない――もちろん偶然だ――ので、彼女とは初対面だったことも納得がいく。 「じゃ、挨拶が済んだところで、早速バトルにしようか」 私も香子ちゃんも、そしてマリーもラーレも、そう言ったカトーさんのほうを向いてはい、と返事をした。 作品トップ | 後半
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「無茶苦茶なコンセプトだな。私が言うのも何だが……正気とは思えんぞ?」 「店長にもそう言われました」 「だが、そこまで否定されてもやる気なんだろう?」 「そっちのほうが面白そうですから」 「……気に入った。調達してやろうじゃないか。連絡先は日暮の所で構わんか?」 「あ。携帯の番号でもいいですか?」 店の奥から静香と店長が出て来たのは、私とロッテの話がひと段落した時だった。 「終わったんですか? 静香」 「ええ。晶さんのおかげで、目処がつきそう」 店と言っても、いつものエルゴじゃない。静香と一緒に出て来た店長も、エルゴの日暮店長じゃなくて、こど……。 「……ココ。それ以上言ったら、マイスターの膝が飛びますの」 「神姫に対しても容赦無しですか」 人のモノローグ読まないでくださいロッテ。 「いくら私でも、そこまで情け無用じゃないぞ?」 うわ聞こえてた。 とにかく。 ここはエルゴじゃなくて、秋葉原のMMSショップ『ALChemist』。静香の隣にいるのは、ALChemistの店長さんこと槇野晶さんだ。 静香と並ぶと姉といも……っと。これ以上言うのも問題がありそうなので、このくらいにしておく。 「賢明な判断だ」 だからモノローグ読まないでくださいって。 「とりあえず、イメージ通りの物が出来そうよ」 「新兵器……ですか?」 それは、私が望んだ『遠近両用で使えて、空も飛べる装備』のこと。いつものことだけれど、静香はその全貌はおろか、概要されも話してくれていない。 「ココが宿題の答えを出してくれたら、すぐにでも使えるんだけどなー」 私は静香から、ひとつの『宿題』を出されている。 『静香が私に何をさせたいか?』 それの答えが分かるまで、新装備は使わせてはくれないのだという。 「……」 宿題を出されて既に半月が過ぎた。 静香は椿さんのスーツを納品し、私は武装トランクで新しい戦い方を模索していたけれど、宿題の答えだけは見えてこない。 私の『静香は私にドキドキハウリンをさせたい』という考えは、完全な的外れだったようだし。 「そうそう。近くに面白いお店が何軒かあるから、帰りに少し回っていきましょう」 私がこんなに悩んでいるのに、この人は憎らしいほどいつも通り。 まったくもう。誰が私とそっくりなんですか? 静香。 「ほぅ。どこに寄るつもりだ?」 晶さんの問いに、静香は私の知らない、いくつかのお店の名前を口にしていた。三つ目あたりを過ぎたあたりで、晶さんの顔が渋るような、困ったような、微妙な表情に変わっていく。 片手を上げて遮ったのは、五つ目だった。 「もういい。十分だ。アレの話を聞いたところで予想は付いていたが……貴様の趣味は良く分かった」 そう呟いて、ため息を一つ。 「……?」 静香の趣味だから、相当変なセレクトだったんだろう。まあ、いつものことだ。 「じゃ、行くわよ。ココ」 いつものトートバッグを取り上げて、静香は外へと歩き出す。 「はい。またね、ロッテ」 私もその後を追い、私の定位置へともぐり込んだ。 「またですの。ココちゃん」 静香の顔が見える、サイドポケットへと。 魔女っ子神姫ドキドキハウリン その15 お昼ご飯を武士子喫茶……武士子喫茶というのは、紅緒みたいな甲冑を着た人間の女の人がウェイトレスをしている軽食屋のことだ。私には理解できなかったけど、今の秋葉原の『最先端』らしい……で済ませ、私達がやってきたのは秋葉原の外れにある小さなお店だった。 秋葉原に林立する雑居ビルではなく、ログハウス風の、喫茶店を改装したような建物だ。 「静香。これ、何て読むんですか?」 入口に掛かった大きな木製の看板には『真直堂』とある。 しんちょくどう? 「ますぐどう、って読むのよ。ごめんくださーい」 静香は何度か来たことがあるらしい。慣れた様子でドアを押せば、カランとベルの音が鳴る。 「ここ……」 足を踏み入れた瞬間、木と布の匂いがした。 周りを見れば、ずらりと並んでいるのは神姫サイズの服と家具。店の隅の方には、見慣れたアクリルケースや金属缶も置いてある。 神姫素体や神姫用オイルまで置いてあるここは……。 「神姫ショップ……ですか?」 品揃えだけ見れば間違いない。 けれど、私は疑問符を外すことが出来なかった。 エルゴ、ALChemist、駅前の神姫センター。神姫ショップには必ずあるはずの物が、見当たらなかったからだ。 対戦筐体じゃない。それよりも必須と言うべきあれが、ここには一つもない。 「ちょっと違うけど、まあそうね」 静香の答えも、私の疑問を解かすには至らなかった。 木と布、プラスチックとオイルの間を進んでいけば、やがてカウンターが見えてくる。 「やあ、君か」 そこにいたのは、大柄な男のひとだった。 エルゴの店長さんよりは少し年上だろうか。もしかしたら、ヒゲのせいでそう見えるのかもしれないけれど。 「お久しぶりです」 どうやら静香は彼とも顔見知りのようで、軽く頭を下げてみせる。 「静香、お知り合いなんですか?」 「ココは初めてだったかしら? TODA-Designでお世話になってる、武井さん」 もちろん、初めてだ。 けれど、TODA-Designは静香の個人ブランドのはず。師匠は別にいるし、それ以外にお世話になっているということは……答えは一つしかない。 彼こそが静香の服を量産している『業者さん』なんだろう。 「ココです。いつも静香がお世話になっています」 サイトポケットからカウンターに降りて、丁寧に頭を下げる。 「そうか。君が……ココか」 「?」 武井さんの言葉に、私は首を傾げた。 不本意だけど、ここでドキドキハウリンの名前が来るなら分かる。何というか、アレの知名度の割に、私の本名は知られていないのだ。酷い時には、私の本名がアレだと思っている人もいるくらいで……。失敬な話というか、正直泣きたくなる。 ……話が逸れた。 「私に、何か?」 武井さんの目つきは、どこか不自然だった。 いやらしいとか、気持ち悪いとか、そういう悪い感じじゃない。どちらかといえば、私を見て懐かしむような、優しい雰囲気だ。 私とは初対面のはずなのに、どうしてだろう。 「……いや、エルゴでモデルやってる神姫がいるって聞いてたからね。どんな子か気になってたんだ」 「そう、ですか」 本当にそれだけなんだろうか。 でも、今の武井さんはごく普通の男のひとだ。さっきまでの懐かしむ視線はもうどこにもない。 「では、改めてはじめまして。武井隆芳です。こっちは、僕の神姫のタツキさん」 その言葉に、カウンターの上にある揺り椅子に腰掛けていたドレス姿のツガルが、軽く頭を下げてくれた。 「本当はもう一人いるんだけど……」 「彼女は二階ですか?」 「うん。仕事中だろうから、また後で紹介するよ」 仕事をしてる子なんだ。すごいなぁ。 そんな事を思っていると、さっきのドレス姿のツガルがこちらに寄ってきていた。 「よろしくね、ココ」 ドレス姿に合わせたファッションなんだろうか。ツガルのトレードマークのツインテールが、左だけしかない。 「よろしく、タツキ」 伸ばされた手をそっと握り返せば、柔らかい笑顔。 「ココ。あたしは少し、武井さんと話があるから。タツキ、ココを案内してくれるかしら?」 「ええ。任せて」 静香の言葉にも、穏やかに微笑み返す。 私の知っているツガルタイプは勝ち気で尖った性格の子が多いけど、タツキはそれとは対照的なおっとりとした子だった。どちらかといえば、アーンヴァルに近い気さえする。 「戸田君がいる君には必要ないと思うけど……お客もいないし、ウチの商品もゆっくり見ていってくれ」 「はい、ぜひ」 そして、静香は武井さんと二階へ上がっていき。 一階の店舗には、私とタツキだけが残された。 長手袋をはめた細い手が、ハンガーに掛けられた服をすいと採り上げる。 「まだ寒いから、長めのコートなんかどうかしら? ココももう少し可愛い色のほうが似合うわよ。きっと」 「可愛い色、ですか……」 そういうの、苦手なんだよな……。 タツキはふわふわのドレスを嬉しそうに着ている辺り、可愛いのも平気なんだろう。 「そういえば、TODA-Designの服ってもっと可愛いのが多い気がしたけど……ココの服は、何て言うか……随分地味なのね?」 機能的って言ってください、タツキ。 それにこのモスグリーンのコート、気に入ってるんですよ? 「可愛いのって、あんまり好きじゃないんですよ。ひらひらとか、動きにくくありません?」 「ああ。そっちが好みなんだ」 はいと答えながら、渡された淡い桜色のコートをフックへ戻す。 「じゃあそれ、静香のオーダーメイドなんだ?」 「ええ。まあ」 静香が私にくれる服の半分はエルゴで売る商品の試作品だけど、残りの半分は専用に作ってくれる。もっとも、専用の大半はレースやフリルがたっぷり付いた可愛すぎる服なんだけど。 あの人の場合、私の服の好みを分かっててやってるからなぁ……。 「武井さんはタツキの服は作らないんですか?」 私の問いに、タツキは苦笑い。 「その代わりに、この店の服は全部私のだから」 あー。言っちゃいましたね。 「まあ、縫製工場の管理とか、こっちでの販売とかデザインとか、オーナーも色々忙しいし。なかなか私やお姉ちゃんのためだけってわけにもねー」 「なるほど……」 プロでお店の経営もするとなれば、色々とする事が多いんだろう。学生兼業とはいえバイトの身分である静香とはかなり状況が違うらしい。 「じゃ、こっちのジャケットは?」 次にタツキが取ってくれたのは、淡い草色のジャケット。 「ああ、そのくらいなら……」 そんなに派手じゃないし、割と好みのデザインだ。 「あれ? この服」 タツキから受け取ったところで、気が付いた。 「どうかした?」 「これ……防弾繊維、使ってないんですね」 静香の服よりも手触りが数段柔らかい。 神姫産業の恩恵で、対刃・対弾性能を併せ持つ防御素材も驚異的に薄く、柔らかくなった……らしい。とはいえ小さな神姫の服に装甲素材を組み込むわけだから、服の肌触りは木綿や絹に比べて当然悪くなる。 私はあの少し硬い感触が好きだから、普段も結構着るのだけれど……戦闘用とおしゃれ用を完全に切り分けている神姫も多いという。 「この店の服はバトル用じゃないからねー。外の看板、見なかった?」 私の言葉に、くすくすと笑うタツキ。 「看板……」 真直堂って書いてあった、あれですか? 「神姫だけじゃなくてね、ドール全般専門のお店なのよ。だから神姫ショップって付いてないでしょ?」 ああ。そうか。 だからこの店には、木と布とプラスチックはあっても、鉄……即ち、武装は売っていないんだ。 「まあ、最近は神姫の服を買いに来るお客さんが一番多いんだけどね」 確かにタツキを見ても、武装神姫といった雰囲気は微塵も感じられない。 「タツキはバトルはしないんですか?」 私の質問にも、笑顔ですぐに答えが来る。 「みんながする分には否定はしないけれど……私は殴り合うより、みんなでお茶したり、可愛い服を沢山着る方が何倍も楽しいわね」 戦っていても、お茶をすることは出来る。戦っていても、プライベートで可愛い服を着ている神姫は沢山いる。 戦う神姫を喜ばせるため、可愛い服を着せたいと願うマスターも、沢山いるはずだ。 「……あ。戦闘兼用服のモデルさんに言う台詞じゃなかったわね。ごめんなさい」 「いえ、気にしないでください」 タツキの言葉に悪気はない。腹も立たない。 ただなんとなく、『勿体ないな』という感想だけが浮かぶ。 そんな事を話していると、玄関のベルがカランと鳴った。 「いらっしゃいませー!」 「いらっしゃいませ!」 ……あ。ついいつものクセで。 「ふふっ。今日はココはお客様でしょ?」 もう。そんなに笑わなくても良いじゃないですか、タツキ。 「今日は賑やかだねぇ」 入ってきたのはスーツ姿の男のひとだった。 糊の効いたシャツに、品の良いネクタイ。どこからどう見ても、これから仕事に出掛けるビジネスマンだ。 「今日は遅かったんですね。お休みかと思ってました」 「ああ、午前中は営業先に直行だったからね。一度家に帰って、これから会社でひと仕事さ」 慣れた手つきでカウンターにカバンを置き、フタを開ける。このカバン、どこかのブランドの最高級品だったはず。 近所のオフィス街の人なのかな? 「こんにちわ。タツキ」 「ご機嫌よう、ベルベナ」 でも、最高級のカバンの中から出て来たのは、なぜかヴァッフェバニーだった。 一流のビジネスマンが神姫オーナーっていうのは、エルゴでもよくある話だけれど……。 「それじゃ、みんなに迷惑掛けるんじゃないぞ? ベルベナ」 「イエス、マスター」 そのベルベナをひとり残し、ビジネスマンは真直堂を出ていった。これから会社に戻って仕事をするんだろう。 「それじゃベル、二階に行っててくれる? 私、お客さんの相手をしなきゃいけないのよ」 「ええ。大丈夫ですよ、タツキ」 タツキにもベルベナにも、いつものことらしい。軽い様子で、ベルベナは静香達が消えていった二階行きの階段へ向かう。 「……二階に何があるんです?」 「あら。気になるなら、行ってみる?」 もちろん、私に選択肢は一つしかなかった。 その光景に、私は目を疑うだけ。 「ようこそ、こびとの靴屋へ」 真直堂の二階は、巨大な縫製工場だった。 次々と断ち切られる布、唸りをあげるミシンの群れ、驚くべき速さで仕立てられていくドール服。 それだけなら驚くに値しない。 驚くべきは、その全てを神姫が行っている、という一点だった。 それはまさしく、絵本で読んだ『こびとの靴屋』と形容するのが相応しい光景だろう。 見れば、さっきのベルベナも他の神姫達に混じって布の裁断に加わっていた。裁ちバサミではなくハグタンド・アーミーブレードを使っているあたり、らしいといえば……らしい。 「この神姫達は……?」 私の頭に浮かんだのは、神姫レンタルブースの事だった。あそこの神姫達は、捨てられていた所を…… 「全員アルバイトよ」 ……は? 「アルバイト!?」 神姫が、アルバイトですか? 「エルゴに神姫の学校ってあるじゃない。あれと似たようなものよ」 「はぁ……」 神姫オーナー最大の悩みといえば、今も昔も変わらない。自分がいない間、神姫の面倒を誰が見てくれるかの一点に尽きる。 私のように静香のお母様がいたり、隣にジルがいたりすればいい。一人暮らしのマスターが寂しがりの神姫を一体だけ買ってきた、というケースは数知れず。 そこの需要を直撃した神姫の学校は、成功を収めたわけだけれど……。よりにもよって、バイトですか。 「ウチの店って、前は神姫の預かり所も兼ねてたのね」 「はぁ」 どうやらこの広いスペースは、その時からの物らしい。 「でもそれじゃ、オーナーの手間ばっかり増えてね。だったら、みんなでオーナーを手伝えばいいじゃない、って事になったのよ」 確かにフロアは明るいし、みんなおしゃべりしたり、歌を歌ったりしながら楽しそうに仕事をしてる。少なくとも、働かされてる、って感じはどこにもない。 「手伝いに入る時間はマスターの都合に合わせて自由。まあ、そのぶんバイト代はそんなに出せないけど……私達の維持費の足しくらいにはね」 「……じゃあ、裁縫の出来ない子は?」 もしかして、面接なんかもあるんだろうか。 それはそれで、何か違う気がする。 「別に、縫製だけが仕事じゃないもの。最低、近接武器がちゃんと使えれば仕事はあるしね」 よく見れば、フロアにいるのは裁縫や裁断をしている神姫ばかりじゃなかった。 試作品の服を着て走り回るマオチャオや、大鎌で家具用の材木を叩き斬っているハウリン、まかないらしき料理を作っているアーンヴァルもいる。 「あのマオチャオは、耐久テストですか」 「さっすがモデル経験者」 静香にもよくやらされますから。 ……なるほど。本人は遊んでるつもりでも、ちゃんと周りの役に立っているわけだ。 近接武器は、武装神姫なら使えない子はいないし。素材を高精度で斬るのはそのまま実戦訓練にも繋がるから、バトル系の神姫でも嫌がりはしないはずだ。 「それにみんな覚え早いしね。第一……」 その続きは、私達の上から来た。 「神姫の着る服は、神姫が作った方が正確だしね」 そこにいたのは、静香と武井さんだった。 「静香。お話、終わったんですか?」 「ええ」 この間エルゴで、この間作ったスーツをエルゴのラインナップに加えたい、という話が持ち上がっていたはず。おそらくはその算段だろう。 「どうだい? こびとの靴屋の感想は」 「びっくりしました」 そうとしか言いようがなかった。 「まあ、普通そうだろうね」 武井さんは私のひねりのない感想にニコニコと笑っている。 「そうだ。ウチのもう一人を紹介しとこう。タツキ」 そう言うと、傍らにいたタツキが、作業台の前に陣取っている神姫の一団に大声を投げ付けた。 「お姉ちゃん! オーナーが、ちょっと来てって!」 「何だいオーナー? 今、仕上げで手が離せないんだけどさー」 そう言いながらやって来たのは、一体のツガル。 タツキと鏡合わせの右だけのおさげに、白いツナギを着込んだ子だ。広い工房を移動するためだろうか。本来のツガル装備ではなく、翼を短く切り詰めたアーンヴァルのウイングユニットを背負っている。 「アギト……じゃない、アキさん。こちら、戸田さんとこのココ」 「ココです。よろしくお願いします」 そっと右手を伸ばせば、ふわりと包み込むタツキとは反対に、力強く握りしめられた。 「そっか。あんたが……」 「……?」 明らかに私のことを知っている口ぶりだ。 「どこかで、お会いしましたっけ?」 「いや。気にしないでくれ」 武井さんのように、静香あたりから聞いていたんだろう。どんな話を聞いていたのかについては、あまり聞きたくなかったので軽く流す事にする。 「アキだ。オーナーんとこで『こびとの靴屋』の現場監督をしてる。よろしくな!」 戻る/トップ/続く
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SHINKI/NEAR TO YOU 良い子のポニーお子様劇場・その3 『Over the Rainbow』(後篇) >>>>> 3 星、星、星――満天の星空。 まるでプラネタリウムのような星の瞬く夜空が、ヘミソフィア(半球状)の天井を成して特設ステージを包んでいた。 幻想的な光景に、しばし見とれたフィシスたちは、自分たちがここに練習をしにきたことを思い出し、慌てて舞台に向かった。 すでに配置につき、空中に待機してきたアクロバットチームたちに混じり、舞台の中央の所定の位置にブルーメンヴァイスの三人がつく。 演出スタッフが本番さながらに操作するスポットライトを浴びながら、フィシスは神姫センターのマスターサーバとのデータリンクを開始する。 アクティブになった回線から流れてくるコレオグラフィーに関する情報と、事前にマネージャーから聞かされていたものとを照合しながら、宙へと躍り出る。 アクロバットチームのアーンヴァルたちとツガルたちが、左右に分かれ散開。 流れる音楽に合わせ、様々なフォーメーションを取る神姫たちの合間を縫って、ブルーメンヴァイスの三人が飛び交う。 星空を落としたような光溢れるステージを、十数体の神姫が時には集合し、時には散開し鮮やかに駆けた。 「らーらららん、らららん♪ らららー、らららー♪」 ハミングを取りながらフィシスが空中を舞っていると、突然目の前を黒い影が遮った。 『ふーん。鑑賞用のお人形さんが、少しはやるじゃん?』 進路をふさぐように現れたアクロバットチームのリーダーに、フィシスは身を翻す。 『ちょっと、接近しすぎよ。その位置だとフォーメーションが崩れてしまうわ』 フィシスは相手に合わせ、喉部声音でなくHFC(センターとのデータリンクを使った高周波通信)を使い相手に呼びかける。 『や~っぱ、アイドル様ってばお上品~。ガイドブックなしじゃ、何もできないタイプ?』 旋回するフィシスをあおるように、アーンヴァルが軌道を重ねてくる。 『ここからは、アドリブタ~イム。見せてみなよ、アイドル様の実力をさっ』 本気――? 思う間もなく、視界の隅で数度瞬いた光に反応し、とっさに急旋回。 アルヴォRDWの銃弾が光を曳いて、フィシスが数瞬前に存在した空間を通り過ぎていく。 『どうなってんのこれぇ? きゃおきゃお!』『どうやら相手は本気のようだ……』白夜と白雪のふたりからのHFC通信。緊迫した様子。 フィシス――マスターサーバを通じて得た空間座標からふたりの状況を瞬時に把握。それによってふたりが、アクロバットチームのアーンヴァルとツガルの集団に追い立てられていることを知る。 ふたりをところに駆けつけようと飛翔したフィシスに、アーンヴァルリーダーが突進する。 とっさにフィシスは振るわれたライトセーバーを、右手に掲げる儀仗から障壁を展開させ受け止めた。乱暴な相手に向かって直接〝声〟を発して抗議する。 「どういうつもり?」 「言ったでしょー、アドリブの練習よ。とっさのアクシデントに対応できないようじゃ、ショーの主役は務まらないでしょ?」 セーバーで障壁を払い退け、距離を取ったアーンヴァルが機関銃を乱射する。 状況をモニタしていたスタッフが、様子がおかしいことに気づいたのか、バラバラな行動を取る神姫たちを制止しようと、大慌てで練習中止の信号を送る。 それに神姫たちが個々で交し合うHFCが加わり、ステージ会場はたちまち幾つもの電波が飛び交う騒乱状態と化していた。 仕方なく、フィシスは最低限の回線のみを残し、他をカット。情報の取捨選択に気をつけながら、撃ってくるアーンヴァルに牽制のため左手から光弾を放つ。 「レイ――ッ!」 立て続けに飛んでいく光弾を、アーンヴァルは翼で風を切りながら軽々と避ける。 「夢見るのもいいけどさぁ? ドロシーもいないアンタらが、オズに会えると思ってんの?」 睨め返すフィシスを見て、「あは、そんな顔もできるんじゃん」とアーンヴァルリーダーは楽しそうに笑った。そのまま体をぶつけるようフィシスの周囲をすれすれに飛び回る。 ワザと危険なぎりぎりの軌道で挑発してくる相手に、カッと上気しながら、 「こんな危険なことを――!?」 咎めるよう声を荒げたフィシスはハッと急反転すると、猛然とステージ会場の一点に向かって急加速した。いきなり明後日の方向に飛び出す白い姿を、アーンヴァルリーダーが訝しげに追いかける。 『ちょっと、逃げるの? それってチョーつまんないんだけ……ど?』 追うアーンヴァルもそれに気づいて目を見開いた。フィシスは構わず加速を続ける。 彼女の持つ大儀仗サクラメントによる、マスターサーバとのインタラクト探査では、わずかの猶予もないことが分かっている。躊躇する時間などない。 『あれって……まずくない?』 リーダーのHFCの呟きに会場内の他の神姫たちもざわつき出す。 新イベントのために飾り付けられたステージ会場、その中で急ピッチな設営のため固定が甘かったのか、それとも元から配置が不安定だったのか――舞台を飾るモニュメントのひとつが倒れ出し、崩れようとしていた。 事態を察知した神姫たちが悲鳴を上げる。崩れるモニュメントの下で、知らずに追い駆けっこを続ける神姫の姿――白夜と数体のツガル。 騒乱状態になった通信状況に、一時的に回線を閉じてしまっているのだろう。モニタスタッフや他の神姫たちが発する緊急通信に、彼女たちは気づかない。 HFCを諦め大声で危険を知らせる周りの声。ようやく白夜を追いかけていたツガルの一体が状況を察し、慌てて離脱をはかる。しかし、白夜とまだ経験の浅いツガルがひとり取り残されてしまう。 彼女たちの前に、人間にとってはさほどでもない――しかし神姫にとっては脅威となるサイズのモニュメントが襲い掛かるように倒れかかる。 その今や怖ろしい凶器と化して崩れ落ちるモノに、フィシスは白い矢となって正面から突っ込んだ――。 4 「にゅきゅ~ん、もう心配したんだよフィたん!」 「ごめんなさい、もう大丈夫よ」 医療用クレイドルの上で身を起しながら、フィシスは手を振って何処にも問題がないことをアピール。心配顔の白夜の隣で、白雪が嘆息する。 「全く無茶をする。一歩間違ったら大惨事」 「でも、誰も大事に至らずにあの状況をうまく切り抜けられたんだから……ね?」 「だからって、倒れてくるモニュメントに体当たりはなかったみゅ~」 あの時――倒れてくるモニュメントから取り残された白夜とツガルを助けるために急行したフィシスは、なんとモニュメントに自分をぶつけることで方向を変えたのだ。 強引に倒れる向きを変えたモニュメントは、白夜とツガルをかすめて落下した。 ふたりは無事だったものの、それと正面から当たり勝負をするハメになったフィシスは気を失い飛ばされて墜落。このセンター内の神姫メディカルルーム(顧客の依頼による神姫の修理や、センター内の神姫スタッフたちの定期診断を行う施設)に担ぎ込まれることとなった次第である。 「いくら何でも無鉄砲すぎ。他にも方法があったのでは?」 「とにかくすっごく心配だったにょ~、うるうる」 うるうる目を潤ませる白夜とジト目の白雪に、フィシスはバツが悪そうに声を小さくする。 「だって……とっさに他の方法が浮かばなかったんだもの……しょうがないじゃない?」 子供のように拗ねた口調で、話す声はどんどん小さくなってく。 その様子に、白雪は一際大きなため息をついた。 「ふう。何はともあれ、フィのお陰で事なきを得たのも確か」 「みんな無事でよかったみょろ☆ ありがとね、フィたん♪」 笑みを浮かべるふたりに、フィシスもにっこりと笑い返した。 「ええ。明日の練習では、また頑張りましょう」 フィシスに見送られ、肩を叩きあいながら白夜と白雪がメディカルルームを後にする。 残ったフィシスは、クレイドルに寄りかかると瞼を閉じた。 いつしか消灯時間となり、メディカルルームも常夜灯の淡い明かりだけを残して暗くなる。 今頃は、外もあのプラネタリウムのステージ会場のように星空だろうか。 「鐘は響くよ ring on ring on♪ 命目覚めるこの大地♪」 曇りよりは、やっぱり晴れた夜空がいい。今の時期ならば、天の川が明るく見えるかもしれない。それとも、摩耶野市の明かりのため晴れていてもあまり鮮明には見えないものなのだろうか。 だとしたら、以前サーバにアクセスした時に見た郊外のマイクロ波発電施設。あの丘に登ったら、きっとキレイな星空が見れるだろう。 歌を口ずさむフィシスの元に、歩みよる影があった。 「キレイな歌ね……」 フィシスは歌を止め、やってきたその神姫に微笑んだ。暗闇にとけるような黒いボディカラー、アクロバットチームのリーダーであるあのアーンヴァルが、そこにいた。 常夜灯の薄明かりの下、クレイドルの端にアーンヴァルが腰を下ろす。隣で身を起すフィシスに顔を向けないまま、静かに語り出す。 「どう、調子は?」 「お陰さまで、万全よ。全系統異常なし……ってね」 「そう、それは安心ね。明日からのステージ練習で、不調を理由に足を引っ張られるのはゴメン」 「ご忠告、ありがたく受け取らせていただくわ」 しばしの、間――。 「ひとつ、聞いてもいい?」 「何かしら?」 「今日の練習中の事故。なーんであんな無茶したの?」 振り返ったアーンヴァルの真剣な瞳がフィシスを見つめる。 「アンタのスピードなら、無茶なマネせずともあのストラーフをつかんで離脱する時間は十分にあったはずじゃん。なのに、何でワザワザ体当たりなんか……」 「――だって。そうしなければ、もうひとりの娘がモニュメントの下敷きになっていたわ」 見開かれるアーンヴァルの瞳を真っ直ぐ見据え、フィシスはさも当たり前に語る。 「自分のチーム仲間でもない、他人を助けるためにあんなことしたっていうの?」 「あら、仲間よ。チームとかそんなのは関係ない。みんなこの神姫センターで働く仲間じゃない」 信じられないといった表情で見つめるアーンヴァルに、フィシスは決まりが悪い小学生みたいに、もごもご。 「……それにメンバーに怪我人がでたら、せっかくの新しいショーができなくなってしまうわ。そんなことしたら、ショーを楽しみにしてくれるビジターのみんなにも申し訳ないでしょう?」 「ほんっとバカね。それで肝心の主役が怪我したら、もっとどーしようもないつーの」 呆れるアーンヴァルに、フィシスがここぞとばかりに強気に指を振る。 「ダイジョーブ。これでもフィは、最新型で結構ガンジョーにできてるの。あのくらいヘッチャラなんだから」 そのフィシスの邪気のない笑顔を見て、アーンヴァルは「あ~っ」と唸って頭を掻きむしると、スッと立ち上がった。 「全く……アンタと話してると、あーだこーだ考えてるこっちの方がバカに思えてくる」 「フィはみんなと話すのが楽しいわ」 「はいはい、よーござんした」ぷいっとそのままメディカルルームから出て行こうとしたアーンヴァルが、ふいに立ち止まった。 「ドロシーと仲間たちは……」 フィシスに背中を向けたまま、アーンヴァルがポツリと呟く。 「それぞれの願いを叶えてもらおうってオズを頼っても、結局それは叶わなかった。なぜならオズはただの小さな爺さんだったから」 フィシスはそんな彼女を見つめる。背中ごしに視線を感じたか否か、アーンヴァルが思い切ったように言葉を吐き出す。 「結局、魔法使いなんて役立たず。何にもなんないっしょ」 「……確かに都合のいい魔法なんてものは、この世に存在しないのかもしれない」 アーンヴァルが見つめる先、入り口の奥を一緒に見つめ、フィシスは続ける。 「でも、ドロシーが願いを叶えてくれたわ。フィたちはそんなドロシーを知ってるじゃない」 こともなげに語るフィシスを振り返り、アーンヴァルはニッと笑みを浮かべると「じゃあ、明日」くるりと背を向け手を振る。 『昼間は、ダチを助けてくれて……サンキュー』 去り際にボソッと呟いたHFCを、フィシスの高感度センサはしっかりと受け取った。 神姫センター摩耶野市店、特設イベントステージ。 満天のプラネタリウムとスポットライトの明かりを受けて、十数体の神姫が宙を舞う。 右に散開する黒い翼、アクロバットチームのアーンヴァル。 左に散開する藍色の羽、アクロバットチームのツガル。 その間を縫って、三つの白い光が駆け抜ける。 艶やかに舞うフィシス。 無邪気に跳ねる白夜。 クールに翔ぶ白雪。 笑顔を振りまくブルーメンヴァイスの三人に、ビジターから歓声が湧き起こる。 三方向に別れた三人は、演武のように先々でアクロバットチームと空中アクションを披露。 白雪のクナイが飛び、白夜がグレネードを撃ち、フィシスが背に広げた大きく輝く羽根から無数のレーザーを放つ。 様々なエフェクトと七色のレーザービイムが乱れ飛び、ステージの熱気は最高潮に達する。 やがて光弾けたその先で、神姫たちは音楽に合わせ、歌い踊り始める。 『見てみて、ビジターのみんなすっごい楽しんでくれてるにょ、ばるばる~』 熱狂するビジターに笑顔を送りながら、白夜のHFCに白雪が応じる。 『ああ。どうやらショーは成功のようだね、フィ?』 ふたりの嬉しそうな通信を聞きながら、フィシスは歌う。そう――これこそがフィシスたちのにとっての魔法の国だ。 これがフィシスたちの進む道。エメラルドの国のその先に、彼女たちは進む道を迷わない。 何故なら―― 『フィたちにとって、ビジターのみんなこそがドロシーなんだもの。ビジターの笑顔こそが、最高でとっても素敵な〝魔法〟なのよ』 それが彼女たちブルーメンヴァイスにとっての、そして彼女たちを応援してくれるビジターたちにとっての魔法なのだ。 白夜と白雪と一緒に歌いながら、フィシスはビジターに飛び切りの笑顔を送るのだった。 ……摩耶野市には、三人の白い妖精たちが住まうという。 今日も彼女たちは笑顔という名の魔法によって、神姫センターを訪れるビジターたちを祝福する。 紡がれるは 魔法の国 の 物語 機械仕掛け の 妖精たち と ヒト の 織り成す 魔法が 語る 夢 と 幻想 の ひととき を あなたに―― 『Over the Rainbow』(後篇)良い子のポニーお子様劇場・その3//fin 戻る
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ぶそしき! これから!? 第0話 『トモダチ』 0-3 「……あ」 神姫センターの店員神姫に武装神姫について色々説明してもらった帰り道に、ふと思い出す。 ネットで武装神姫の取扱店を検索した際に、先ほどの神姫センター以外にももう一件あったことを。 今の所からそれほど遠くはない。 少し寄り道する程度の所だ。 わずかに逡巡し、今回はちょっと覗くだけと、その場所に向かう。 「あった」 携帯のナビで特に苦労することなく、もう1つの神姫取扱店に到着する。 ――『おもちゃ屋スターフィールド』 中古品も取り扱い、売買する旨が看板に書かれていた。 薄暗い感じはない。 戸惑わず子どもでも入れる、そんな感じの店だ。 「いらっしゃいませ」「い、いらっしゃい……」 入るとカウンターから声がかけられる。 店内は清掃が行き届いていて清潔で明るい。 近くの棚を見ると、ロボットもののプラモに武器セットが並べられている。 少し奥の方を見ると武装神姫のUSEDコーナーが見える。 行こうとして、ふと気づく。 カウンターに人の姿がない。 「あの、今店長が留守にしているから、あたし達が店番をしています」 「な、なにか御用でしょうか」 よく見ると、カウンターには店の名前が書かれたエプロンらしきものを着た緑髪と黒髪の2体の神姫の姿がある。 黒髪の神姫は何故かメイドさんの衣装を着て、恥ずかしげにしている。 「ええと、ちょっと中古の神姫が見たくて……」 黒髪の神姫があまりにも恥ずかしそうにしているので、何か見てはいけないものを見てしまった気分になる。 少年も少し恥ずかしくなりながら要件を話す。 「……」 緑髪の神姫が黒髪の神姫を少し見やり、一息ため息をつく。 あの様子では接客は無理だろうと判断する。 「あたしが案内します。ハーティア、レジお願い」 「ま、マリーベル。分かったよ」 相方に頼み、マリーベルと呼ばれた緑髪の神姫が少年に向かう。 「お客様、手に乗らせてもらってもいいですか」 「あ、うん、いいよ」 提案に素直に頷き、少年がその手を差し出す。 「失礼します」 一言断りを入れてから、カウンターから一飛びして軽やかに少年の手に乗る。 ■ ■ ■ 「そこを右に曲がった棚が、武装神姫の中古素体の場所です」 誘導に従い、少年は歩を進める。 手の上の神姫を見て、ふと浮かんだ疑問を問いかける。 「……ねえ」 「はい、何ですか?」 手の上の神姫が静かな口調で答える。 「君ってマオチャオ?」 「……そうです。あたしは猫型MMSマオチャオのマリーベル」 答えが簡潔に返ってくる。 「ええと……」 「あたしは他のマオチャオの性格と大きく違うから、お客様が疑問に思うのも当然です」 少年がさらに聞く前に、マリーベルは静かな口調で話す。 その様子は実際に見た、話に聞いたマオチャオという神姫のハイテンションのものとは大きく異なる。 「神姫にも色々います。あたし達みたいな変わり者だって当然いる。……あたし位で驚いていたら、これからもっとびっくりすることになるよー」 最後に基本的なマオチャオの真似をして、冗談っぽくマリーベルが言う。 しかし、表情は少年の知っているマオチャオの元気いっぱい天真爛漫の笑顔ではなく、どちらかといえば少し固く、儚い感じの笑みだ。 その笑みの違いが、少年にも神姫も色々であることを実感させる。 「あ、うん。……よく分かった」 「あ、お客様」 ちょっと考え事をしていると、マリーベルから呼びかけられる。 「通り過ぎてます。USED素体の場所」 「――え?」 そそくさと戻り、少年は武装神姫の中古素体の陳列棚に目を見やる。 「……あ、神姫センターで見た新品のよりすごく安い」 少年の懐具合で考えれば、それでもまだまだお高い値段だ。 しかし、手が届かないほどではない、そんな具合だ。 「神姫センターは基本定価だから。それにこのお値段は武装なしのUSEDですから」 「そうなんだ。えと、買ったら動かないとか、何か問題が起きたりとか、しないよね」 ふと思った疑問をマリーベルに尋ねる。 「ええと、そこは――」 「ソフトもハードもチェック済み。起動しないということはないよ。 保証期間も付いてるから、起動後に何かトラブルがあっても安心。 今なら素体のリペイントサービスもしていて、買ってくれた神姫をお好みの色に染めあげれるよ。 ボス……店長がいれば、起動やユーザー登録などの作業も手伝ってくれるよ。お買い得だね」 「そうなんだ、ありがと……って誰?」 少年の疑問にマリーベルではなく、別の声が答える。 「あ、セラ姉さん」 マリーベルが声かけた方を見ると、そこにロングの青髪の神姫がいた。 その神姫は長袖長裾のゆったりした服を着て、その上に店名が書かれたエプロンを着ていた。 メガネをかけているせいなのか別の理由なのか、少し理知的でどことなく落ち着いたような雰囲気がある。 「悪魔型MMSストラーフのセラフィルフィスだよ。よろしくお客様」 「あ、よろしく」 挨拶されて、少年は思わず挨拶し返す。 「マリーベル朝から店番ありがと。今バッテリー残量少ないでしょ。 お客様、よければあたしがマリーベルの代わりに案内と説明をさせてもらうけど、良いかな」 「あ、うん。いいよ」 少年に了解を求めるセラフィルフィス。 バッテリー残量少ないなら仕方ないよねと了承する。 「でも、あたしまだ――」 「いいから。お客様も了解してくれたし、しっかり一休みしなさい。無理をするのはマリーベルの悪い癖だよ。それに戻って店長に店番したこと褒めてもらいなよ」 優しく諭すようにセラフィルフィスはマリーベルに声をかける。 「分かった。失礼します、お客様」 マリーベルはぺこりと少年にお辞儀をして、手から降りてトテトテと走って去っていく。 そんな様子を少しかわいいな、と思いながら見送る。 「さて、お客様、マリーベルに代わりましてセラフィルフィスがご案内させていただきます。何かお探しのもの、またはお聞きしたいことなどありますでしょうか」 マリーベルを見送ると、セラフィルフィス茶目っ気を入れながら挨拶し、最後にウインクする。 「ああ、うん。そうだねー……」 棚を見やる。 そこには悪魔、天使、犬、猫、侍、騎士、種、花、鳥、人魚、兎、砲、銃火器、イルカ、戦車、飛行機、カブト、クワガタ、蝶などなど様々なものをモチーフにした神姫の素体が並ぶ。 ふと、棚から目を離して通路の奥を見ると、カーテンで仕切られた空間が見える。 「ねえ、あのカーテンで仕切られたところって――」 「あそこは年齢が上の方々のコーナーです。お客様にはまだ早い場所ですから。 それよりも、何かお気になる神姫はありませんか? 今なら、この騎士型や戦車型、セイレーン型なんてお求めやすい価格ですよ」 にこりとやたら丁寧な口調で返され、さらに今のオススメの神姫を紹介される。 「あ、ホントだ。これなら、今まで貯めたお年玉とおこづかいで……。う~ん……」 「気になる娘がいたら、なんでも聞いてね」 値札を見ながら少年は悩む。 棚に戻し、値札を見て、を繰り返す。 時おり、質問をする。 セラフィルフィスはその姿を微笑みながら眺め、対応する。 ■ ■ ■ 「――あ」 気がつくと、窓の外はすっかり赤く染まってしまっている。 思ったより長い間、悩んでいたらしい。 「ごめん、帰らなくちゃ」 急いで帰らないと暗くなってしまうと店を出ようとする。 「あ、色々教えてくれてありがとう」 去り際に少年はセラフィルフィスにお礼を言う。 「どういたしまして。これ保護者同意書。また来てねー」 いつの間にか用意されていた保護者同意書を渡され、少年は見送られる。 出入り口に向かう際にカウンターが見える。 そこには店長と思しき大人の男性と、いつの間にかメイド服からツナギのような服に着替えた黒髪の神姫――教えてもらった通りなら、おそらく犬型MMSのハウリン――の姿があった。 「ありがとうございましたー」「ま、また来いよー」 声をかけられ、店を出る。 (家に戻って、お父さんが帰ってきたら、保護者同意書を書いてもらって、明日――) うきうきと軽い足取りで少年は帰宅する。 ――少年が神姫のマスターになるまであと22時間 前へ / 次へ トップページ
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暗い部屋。精錬した部屋。狭い部屋。穴のような部屋。その中央に座する人影は、パソコンのディスプレイに1つの兆しを見る。ボイスチャット。 「・・・お呼びですか、会長?」 『ああ。昨日の会議の首尾を聞こうと思ってね』 「何も、滞りなく。しいて言えばヒメガミ神姫センターの方から飲食コーナーが赤字続きである事と、逆に『プチトマト』の売上が予想外に多く生産が追いつかない、という報告があった程度です」 『飲食が赤字、それは商店街が活発だという事だろう? それならばコーナーは無くしても構わないな。館内飲食自由にして持ち込んでもらおう。ただし衛生面管理を強化する事。神姫用服飾の方は、まあ無闇に労働力を増やせる訳でもないから現状維持でいい』 「了解。私と同じ見解ですね」 『・・それは、嫌味か?』 「いえ、単純に同意見なのが嬉しいのですよ、我が主」 『・・・やっぱり、嫌味じゃないか』 画面から響く闇は、少し、微笑む。 『ところで副社長、社長は、今居るのか?』 「社長でしたら、今日は来ませんよ」 『・・・そうか』 揺らぐ背景。カーテンの、囁き。いつの間にか開け広げられた窓からは、夕の木漏れ日と、風。 「何だ、いらして居たのですか」 其処に、佇む闇が有る。影を張る衣。座する者。小さな姫・・・ 「来ちゃ悪い? 自分の会社に」 「それなら、例え“神姫”であっても、正面からいらして下さい、我が主」 副社長は、その闇に、微笑む。 ・・・其処にあるのは雛人形。 「・・・・は?」 「うっわ~、こんな初歩的なテにひっかかるなんて」 「・・・会長?」 真横からの声で、彼はようやくその姿を見つける。今度こそ、今度こそ神姫。 「それにしても寒かったわね、今の『例え“神姫”であっても、正面からいらして下さい、我が主』だって~。うぷぷぷぷ」 「・・・何を、なされているのですか」 「そりゃまあ忍者らしく、変わり身の術。趣味で」 「趣味の時点で忍者ではありません」 ・・まあ、口は悪いが、一応、神姫。 「相変わらず給与査定を気にしないツッコミよねえ。それともMなの?後ろの穴準備してるの?」 「穴とか後ろとか言わないで下さい」 ・・・・いや、きっと自信は無いが、まあ、神姫・・・ 「それに、いらっしゃるのでしたら、わざわざチャットするだけの為にハッキングをしかけて来ないで下さい。毎度の事とは言え、ネットハッカーとしても著名な会長にあんな事をされると警備部が面食らうのですから」 「忍者らしい趣味でいいじゃない。警備には抜き打ちテストだとか言っておきなさいよ」 「それも趣味のカテゴリに入る行為ではありませんし、公私織り交ぜている時点で忍者らしくもありません」 「会長にツッコミ入れるのは公私混同じゃないの?」 ・・・。 「全く、会長。せめて上司らしくするか神姫らしくするかどちらかにして下さい」 「あたしは、どっちだっていいのよ。細かい事気にしてるとハゲるわよ?」 「・・・私の役職は細かい事を気にする為にあります。ほら、会長があまりに馬鹿な真似を連発なさるから、ナレーションさんも閉口してしまったではありませんか」 「うわそれあたしのせいにする? 冷静に考えたら、ノリノリで『我が主』とかクっサいセリフ言ってる方がおかしいでしょ? と言う訳で以降解説やりなさい貴方。やらないとマジ減俸」 ・・・ご指名を頂いてしまいましたので、僭越ながら私が紹介をさせて頂きます。私の名前は火神基生。ヒノカミコーポレーション副社長を務めております。そしてこの先程より暴言と公私混同の限りを尽くす忍者型神姫が、御恥ずかしながら我が『ヒノカミコーポレーション』会長です。信じられないでしょうが本当です。社内でも極秘事項ではありますが。 「あ、ちなみに会長職も趣味だから」 「・・・私の祖父たぶらかしてその地位を得ておいて、趣味ですか・・・」 「え~、ちゃんと独力で稼いだ分もあるわよ」 「それはハッカーとして違法に稼いだ資金であるとか先日言っておりませんでしたか?」 「ちゃんと企業利益にも貢献してるでしょ?」 「“神姫パートタイマー”ですか」 神姫パートタイマーは、会長の考案した、会社や学校に通う神姫オーナーの為の『預かり所』を我が社が設置し、其処に預けられた神姫の中で希望者にパート労働をさせるシステムです。我が社の系列店舗への派遣や『プチトマト』等系列店に卸す神姫用服飾衣類の生産など、人件費も安く上がる事もあり数々の実績が上がっております。ただし・・・ 「あれは割に合いませんし、どちらにしろ違法です」 現状のMMS国際法では経済情勢に影響を与えてしまうこのような形での神姫の労働は禁止されています。其処は神姫への給与を『ないしょのおこづかい』として神姫に口止めを行い、オーナーも含め情報漏洩阻止を徹底して対処しています。しかし、そもそも神姫へ労働賃金を支払う義務自体無いのですが。 「いいじゃない、だから趣味なんだし」 「・・・人を巻き込まないで下さい」 「巻き込んでるのは神姫でしょ?」 「私の事です」 何と言っても、その事実を知るのはほぼ私だけなのですから。 「・・・それはともかく、会長、どうしてヒメガミを避けているのですか? 会いたがっていましたよ」 ヒメガミというのは私の妹、ヒノカミコーポレーション社長火神天姫の事です。実質社長職は私と会長で半分以上受け持っているのですが。 「それは、“会長”にじゃなくて“あたし”にでしょ? 実はヒメガミちゃん、会長の正体を探ろうとしてたのよ。それでもう探らせまいと悪戯しちゃったから、顔合わせづらくて・・」 「・・・もしかして、鋏の言っていた大迷惑神姫をヒメガミの護衛に送り込んだのは会長ですか」 「あれ? あなたもハサミと知り合い? 奇遇ねえ。あたしはハッカーの方で知り合い」 鋏と言うのは私の腐れ縁の私立探偵の事です。腕は確かな方ですが、昔から法に触れる事と女性が好きな厄介な奴でしたよ。 「ともかく、まだ、あたし=会長って知られたくないからね、悪いけれど」 「それは教えていなかったからでしょう?」 「だって~、仕事だからってついヒメガミちゃんには辛く当たっちゃったりしてるもの。今更言えないわよ」 「仕事って・・・先程と言っていることが違います」 「あたしはどっちだっていいのよ」 「良くありません。それに、それだけではないでしょう? ヒメガミに嫌われる理由は」 「じゃあ何よ?」 「決まっています・・・」 そう、会長が神姫と知ればそれはごく“当然”の事。何故ならば・・・ 「普通、好きで神姫に仕えようとする人間なんて居ないのですから」 「・・・うっわ~、あたしの事ほぼ唯一会長って知ってて、尚且つその下で働いてる癖にそういう事言うの? 変態?」 「はぐらかさないで下さい。それから何気に人を変態呼ばわりしないで下さい」 「主従逆転して何とも思わない人間なんて、変態以外の何者でもないでしょ?」 会長は相変わらず毒舌で私をあしらう。いつもであれば、私はここであきれ返る。しかし、もう騙されない。これは、会長の、テストだ。 「・・・私は、“自分の認められる人物以外”の元で働きたくはありません。それが単に会長だったと言うだけです」 「・・・全く、その失業保険の手続き方法を気にしない口の利き方というか、ヘンに融通の聞かない真っ直ぐさと言うか」 「こういう、性分です」 「嘘が無い事くらい判っているわよ、最初から」 誠意を持って見据えた闇は、私に微笑を返す。どうやら、テストは合格のようだ。 「・・・怖かったの、ですね?」 「まあね。あたしの気に入ってる子があたしを罵倒したり、あたしの前から居なくなったり、そういうのって、やっぱりこたえるもの」 「それでも、続けなければならないのですか、こんな事を」 「こんな事って、仮にもあんたの家族引っ掻き回されてるんだからもう少し大事にしなさいよ」 「私にとってはそうですが、会長にとってはそんなものでしょう? 何しろ、事が公になれば会長はおろかすべての神姫が脅かされるのですから。そこまでして得られるメリットがあるとは私には思えません」 「趣味って言ったじゃない?」 「趣味なのですか?」 「・・・違うわよ」 闇が、少しくすむ。 「では、聞かせて頂けますか。誰にも認められない道でありながら、そこまでして、会長でいる、理由を」 「・・・まあ、あなたになら、そろそろ言ってもいいかもね」 「・・・あなたは、あたしの事、何者だと思う?」 闇が揺れる。何処からか、会長は大きな・・私には小さなカードを取り出し、切り始める。 「・・・武装神姫です」 「そうね」 その中の一枚、それが突然飛び出し、私の手元に届く。描かれているのは、会長と同じ型、忍者型MMSフブキ。 「あたしの、心は? 神姫?」 「・・・判りません」 「正直ね。でも・・そういう、事よ」 会長は、手を止め、そのカードの束を伏せる。 「人間は、神姫の“心“を正しく認識出来ない」 会長は、暗くも無く、重くも無く、唯佇む闇のように、言い放った。 「考えてみれば簡単な事よ。人間はそもそも自分達の“心”を解析し切っていないのよ? あなただって自分の心が全部判るって訳でもないでしょ?」 「そうですね」 「・・・意外と冷静ね。結構ヒドい事言ってるわよ?」 「今更です」 「あはは~、それもそうね。ま、つまり、そんな現状なのに人間は神姫にも“心”があるって言っちゃったのよ。だったらそれが“神姫の心”をちゃんと認識しているとはお世辞にも言えないでしょ?」 「では、人間の“心”から想像された神姫の“心”も、人間のそれと同じという事ですか?」 「それはちょっと早とちりかな。言っちゃえば、人間の“人間”という認識は今思いっきり拡大しちゃっている所なのよ。神姫とか人間とか、それ所じゃなくね。だって例えば、犬にも人間の感覚を適用して考えちゃうでしょ?」 「・・・なるほど。それは、犬の“心”も人間の“心”と同意に置いているとも言えますね」 「犬どころじゃないわ。猫だろうと蟻だろうと映画のエイリアンだろうと、この足元の地球サマすら人間は自己と同位に置いちゃう事があるでしょ? そしてその可能性を否定し切れない」 「何故ですか?」 「“拒絶”されてないからよ。されているとしても、明確に意思疎通が出来ないからそれを認識できない。つまりはそれが自分と同位存在か否定しきる事が出来ないって訳」 「・・・哲学的な話ですね」 「割と真実よ。だって実際“違う”って言い切ることが出来ないじゃない? だけど“それが人間と同じ心を持つかもしれない”という選択肢は、思考し続ける限り拡大する。つまり現状、人間には世界の全てが自分たちと同じ“心”を持っているかもしれないって思っているのよ」 「・・・暴力的な、話ですね」 「・・・聞きたいって言ったのあなたじゃない」 「つまりはね、人間は未だ神姫の心が何処まで自分達と違い、何処まで自分達と同じか決定的な判断は出来ないの。例えるなら・・そうね、同じアパートのお隣さんくらいしかわかんないのよ。そこに、“創造者”と“被造物”の関係は意味を成さない」 「・・・神姫は初めから、人間の、“創造者”の“設定”を無視しえるのですか」 「そういう事」 会長は、カードの山かを捲る。一番上にあった図柄は、騎士型サイフォス。 「だから、与えられた“設定”を神姫が拡大解釈や勘違いする事だってある」 次に現れたのは、マーメイド型イーアネイラ。 「与えられた武装の“設定”された用途を無視し、より良い使用方法を見出してしまう事もあり得る」 3枚目、黒き翼。天使型アーンヴァルB。 「与えられた“設定”を神姫が拒絶する事もあるわね」 「・・・ですが、神姫らしい神姫も居る筈です」 「あっ! こらちょっと!!」 私は会長の手を遮り、2枚のカードを引き出す。絵柄は砲台型フォートブラッグと、建機型グラップラップと無骨なモチーフの組み合わせ。 「“設定”を神姫が無視するのではなく、オーナーである人間が無視し、そぐわない改造を行ったり、武装の違う用途を強制したりするだけではないのでしょうか?」 「それにしたって神姫と人間の意思疎通が出来て無いって事じゃないの。それなら・・・」 会長は私から山を奪い返すと、また1枚捲る。鮮やかな赤、サンタ型ツガル。 「人間がその“設定”から神姫にコンプレックスを植え付けることもあるでしょ? 勿論自分でそれを克服する事も出来るし」 「・・・そうですね」 説き伏せられた私にもうその気はないにしろ、今度は私の手元も警戒しながらカードを捲る会長。次なるは、雄々しき赤、寅型ティグリース。 「そして、人間に“設定”された“絆”まで否定してしまう事もあるでしょうね」 其処まで捲ると、会長は残った山をもう一度切り始める。丁寧に。 「更に、神姫が凌駕し得るのはそれだけじゃない。人間自身の“能力”も、時には飛び越えちゃうわ」 改めて整頓され置かれたカードの山。小さな腕がまたひとつ、新しい絵柄を見せる。白き力。悪魔型ストラーフW。 「例えば、運転や調理技術、神姫の技能が人間のそれを超えてしまうかもしれない。その“能力”も、それを望みえる“心”もある」 間髪置かずに、今度は愛らしく、種方ジュビジー。 「そうであれば、神姫がその技能を人間に教える立場にだってなり得るわよね。その“能力”だって望めば有るもの」 猛しく、犬型ハウリン。 「神姫が商店でも経営して、人間と同位の経済活動に参加することも可能よね。その“能力”も望める。人間よりも適材な時もあるかもね」 「・・・それは、会長が出資しておられる『ペットショップオシイ』の事そのものでは?」 「あ、バレた?」 おどけながら捲る色彩。艶やかな、花型ジルダリア。 「・・・それで、まあちょっと言いづらいけれど、神姫が人間を殺し得る“能力”だってあるのよね。毒薬でも作ればいいんだし」 「言い辛いなら言わないで下さい」 「でも言っておかないとキモチ悪いし。あ、あたしはそんな物騒な真似までしないわよ?」 「・・・今の時点で十分物騒です」 「そして、人間より人間臭い“精神”の神姫だって居てもいいわよね。例えば金にがめつい奴とか、Sな奴とか。あ、Mは論外ね。主従関係って基本マゾ臭いから」 「・・・先程から聞いていれば、SMなんて連呼しないで下さい、はしたないですよ」 言いながら捲られたのは、丑型ウィトゥルース。そして猫型マオチャオ。 「はしたなくて悪かったわね。でもはしたない所じゃなく、人間を利用しちゃう神姫もきっと居るわよね。それから、『脅し』や『お願い』で人間を操縦しちゃう、そんな図太い“精神”の神姫も居るかもしれない」 「先程から聞いていれば・・・それは全て、会長にも当てはまりませんか?」 そう?とでも言いたげに意地らしく笑って捲られたのは、侍型紅緒、それと兎型ヴァッフェバニー。 「・・・考えたくありませんが、人間の意思決定を担ってしまう神姫や、それを容認し委ねてしまう、そんな“精神”の人間まで居てしまうのでしょうか?」 「・・優柔不断な奴なら、そんなのもあり得るんじゃないの?」 手招きされて、1枚ずつ捲ったカードに描かれていたのは、見事に対の天使型アーンヴァル、悪魔型ストラーフ。 「まあ、その代わり神姫と人間の“心”が明らかに別物の可能性だってあたしは否定しないわよ。なんて言っても身体構造が違うのだし、絶対に相容れない部分もあるでしょうね」 その言葉とともに一枚がはじき出される。手元に寄せれば、写っていたのはイルカ型ヴァッフェドルフィン。 「それならむしろ、人間と神姫、お互いがその“心”を別視する事で、人間が神姫をちゃんと認識出来るようになるのかもしれないけれど」 「・・・こんな風に、これだけの可能性を神姫の“心”は内包している。けれど、神姫が自由に生きるにはまだ難しい世界よね。・・そう、だから、“心”の自由さに気付いた神姫が、“居てもいい”為に手助けをしたい」 会長は全てのカードを戻しながら締め括る。とても優しくて、儚い、理想。 「そして“隣部屋の隣人”にも理解して貰いたい。あたしや、そんな子達が居る事を」 「その為には、力が、必要と?」 「そうね。回りくどい事するには色々と、ね。それが、あたしがこんな馬鹿やる理由かな」 そして、最後に、少し崩れて笑う。 会長は涙を流さない。神姫であるからです。しかし、そんな笑みの意味を私は知っています。だから、こんな時、私は・・・ 「・・・今自分で馬鹿だと認めましたね?」 「ナニそれ? 今までも馬鹿だって思っていたって言うの!! 馬鹿だって思う奴が馬鹿なのよ!!」 「大体良く聞いていれば、どっちつかずで、神姫も人間も引っ掻き回すような理屈ではありませんか」 「う・・・だったらあなた1人の胸にでもしまっときなさいよ!」 「毎度の事ながら、無理難題を言わないで下さい。それで、会長は神姫と人間、どちらの味方なのですか?」 「あら、そんなの、あたしはどっちだっていいのよ」 「またそれですか。あなたの“部下”は本当に、疲れます」 私は、一番私らしい“信頼”の言葉で返す。 「・・・まあ、許してあげる。何だかんだ言って、あなたの事結構気に入ってるのよ? 今まであった男の中で3番目くらい」 「微妙に嬉しくありません。会長とはアパートの隣人程度で十分です」 「あら、つれないわねえ」 そうすれば、“このひと”はまた微笑む。知っている、それも。 「・・・あ、そう言えば」 「まだ何かあるんですか?」 「神姫だろうと人間だろうと、運が悪いのだけはどーにもならないわよねえ?」 「それはそうでしょう。ラプラスの悪魔とでも契約しない限りは」 「・・・それも嫌よね」 その時、いつの間にか踏んでいたカードに気付いた。落ちて、いたのは・・・ 「あ! そのエウクランテのカードに足跡つけたわね!! 弁償よ減俸よ!!」 「不可抗力です」 最後(?)もやっぱり、ちゃんちゃん。
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猫子かわいいよ猫子とか書くのだー - 猫子になりたかった犬子 2007-11-16 05 31 45 今日はこれくらいにしておいてやるのだー - ねここ 2007-11-16 06 34 15 まおちゃおだんかわいいよまおちゃおだん - 良 2007-11-16 09 43 47 バトロンページがじどーけんさくりんくでみにくいのだ、なんとかしてもいいのだ? - ぬここ 2007-11-16 12 56 11 とっぷぺーじのままかわいい♡ - えうえう 2007-11-17 03 38 25 ページ編集が重いから一時撤退なのだー - ねここ 2007-11-18 23 56 22 白子すごい似合ってるわよ愛してるわ - 黒子 2007-11-21 12 06 56 やーめーてーくーだーさーいーおーちーちーをーしーぼーらーなーいーでー - 丑子 2007-11-23 16 50 16 私は不幸の星の元に生まれた神姫・・・ - 麗花子 2007-11-23 18 53 38 11/21に編集されたときに編集しきれていないタグのごみが見えるページがありますので、該当するページでお気づきの方は気がついたときに修正していただければと思います - 名無しさん 2007-11-24 07 56 32 ゆるきゃらNo1は、このしまさこにゃんニャ!! - しまさこにゃん 2007-11-27 20 04 26 しまさこにゃん・・・?新型MSか - 名無しさん 2007-11-27 21 32 00 そんなに知名度低いのか、しまさこにゃん・・・ - 名無しさん 2007-11-28 04 48 10 知名度云々じゃなくてimg神姫スレを半年POMれ、しまさこにゃんなんか全く出てこないから - 名無しさん 2007-11-28 08 06 58 しまさこにゃんが出たとき、ワイドショーでやってたな。名前までは覚えてなかったが。まぁimg神姫とは関係ないな - 名無し(関東) 2007-11-28 08 13 39 tろころで虹裏神姫キャラ全集 のトコ、キャラ説明が虹裏神姫と派生キャラ ってのと虹裏神姫キャラ全集 てヤツの2種類あるんだが? - 名無しさん 2007-11-28 08 18 52 しまさこにゃんは最近出てなかったか?もしかして、出し惜しみしてたとか - 名無しさん 2007-11-28 18 29 13 しまさこにゃんもひこにゃんもimg神姫には関係ないだろ - 名無しさん 2007-11-28 19 00 11 ひこにゃんはネタ的に武士子と絡んでる。しまさこにゃんは「」の共通認識的キャラとして定着はしてない - 名無しさん 2007-11-28 19 02 11 絡む相手がいないのか。それともこれから絡む予定なのか・・・。しまさこにゃんはひこにゃん同様好きなので、ぜひ出てはほしいけどね - 名無しさん 2007-11-28 19 15 36 キャラ定着させたければネタ考えてimgスレに投下すればいいじゃない - 名無しさん 2007-11-28 19 18 07 そうだね、ありがとう。とりあえずあとで考えておくか。ついでにやちにゃんも出してゆるキャラを定着していこうか - 名無しさん 2007-11-28 19 29 22 ひこにゃんにしろリボルテックにしろ、「」達の会話の中で自然にキャラが出来上がって行ったものだから「キャラ付け目的」が見え見えだと逆にウザイと顰蹙を買う恐れあり。「俺が好きだから」とかで勝手に居たことにしてキャラ捏造したりしてもすぐ消されるだけだ - 名無しさん 2007-11-28 19 39 26 一人で頑張っても定着しないのよー - 名無しさん 2007-11-28 19 48 53 みんなも一緒に盛り上げればなんとかなるんだろうけど、そう上手くいくかな・・・? - 名無しさん 2007-11-28 20 28 34 定着させるには、結構手間隙がかかるというわけね。ひこにゃんは運が良くて、しまさこにゃんは運が悪いということなのか白根? - 名無しさん 2007-11-28 20 35 29 そもそもなんでしまさこにゃんなんぞを定着させたいのよ - 名無しさん 2007-11-28 21 17 06 「俺が好きだから」じゃね? - 名無しさん 2007-11-28 21 26 39 そりゃ、ひこにゃんに対抗したいからだろうな - 名無しさん 2007-11-28 21 28 15 「俺が好きだから」だけじゃ理由にならないな。知名度高めたいからだろ - 名無しさん 2007-11-28 21 31 10 宣伝か?彦根市職員? - 名無しさん 2007-11-28 21 32 45 正直ひこにゃんの紛い物的な認識で終わると思う・・・ - 名無しさん 2007-11-28 21 33 52 紛い物というよりは、キャラの増やしすぎって感じがする・・・ - 名無しさん 2007-11-28 21 36 33 もうキャラ紹介のページとか要らなくね?半Pで済む話だし、オレ設定で捏造されて混乱するのもどうかと思うし - 名無しさん 2007-11-28 21 38 28 初めてimgの神姫スレに来た奴が、何で白子が酔っ払いなんだとか武士子が動かないとか戸惑わない為に残しといてもいいんじゃね? - 名無しさん 2007-11-28 21 45 33 虹裏神姫と用語は残した方がいいんじゃない? - 名無しさん 2007-11-28 21 49 29 というか今更wikiを変える必要性自体感じないんだが - 名無しさん 2007-11-28 21 54 06 どっちにしろ俺設定の定着目的の編集はやめとけって事で一つ - 名無しさん 2007-11-28 21 57 43 各虹裏神姫の紹介と虹裏神姫と派生キャラ の中身がえらい被ってるんですがどうしたものか、どっちか一つでいい気もするが。 - 名無しさん 2007-11-29 06 12 03 1)キャラごとにページをつくって、2)紹介ページに1のページを呼び出す、3)見た目は今までどーり見える、4)まおうれしいにゃー♪ - 名無しさん 2007-11-29 08 30 55 なんか編集合戦が凄いな - 名無しさん 2007-11-29 08 47 36 オレ妄想設定を普及しようと必死な子と魔境化してるwikiの現状を少しでも改善しようって奴の激闘の記録だわな - 名無しさん 2007-11-29 10 12 14 各虹裏神姫の紹介、の方はもうページごと消してもいいんじゃないか?情報古いし被ってるし - 名無しさん 2007-11-29 15 07 05 そのうち限界が来てウキーとなったら気が付くだろうから生温かく少し離れて眺めておくのが吉 - 名無しさん 2007-11-29 16 55 39 キャラ解説を編集してる奴って本当にimgスレ見てんのか?妹りんの家事を手伝う奴とか見たことないんだが - 名無しさん 2007-12-10 20 04 04 いくらなんでも一人でやってるわけじゃないだろ - 名無しさん 2007-12-10 20 14 58 詳しい事は知らないが、書き込むときはもう少し情報を集めてからでもいいんじゃない? - 名無しさん 2007-12-10 20 18 05 一人でやってるやってないの真偽はともかく、imgスレでは誰かが手伝ってるとかって話は一度も出てないぞ - 名無しさん 2007-12-10 20 20 51 なるほど、結局真偽は不明というわけね - 名無しさん 2007-12-10 20 30 09 真偽不明、というか「一人で家事とかかわいそう」みたいな妄想補完なら止めとけって話 - 名無しさん 2007-12-10 20 34 15 キャラ全集トップページの女性も見てるので云々〜て注意書き、アレ必要か?いや内容自体は一般的に考えれば全く間違いじゃないが、そもそも説明してる内容が「ふたばの二次元裏のimg鯖に立つ神姫スレについて」だぜ? - 名無しさん 2007-12-11 14 38 51 いいんじゃね? エロ方向は暴走しやすいから、書き込む前に一回考え直す事にもなるし - 名無しさん 2007-12-11 14 48 10 ああ、いつもスレでやってるような事をそのまま書くのはまずいのは分かるのよ。ただその「エロっぽい文はダメ」の規制の範囲がね。今書かれてる内容程度までならいいのか、それともまるっきりダメと言うつもりなのか - 名無しさん 2007-12-11 15 08 50 少しだけなら問題ないんじゃない?これは度が過ぎたエロ文を書いちゃダメって意味なんじゃないかと - 名無しさん 2007-12-11 17 16 44 検索でここにたどり着くような人のことを意識しているんじゃないかなぁ。武装神姫の(女性)オーナーが増える機会をみすみす失ってしまうような表現は控えたら?という女性視点からのアドバイスだとありがたく受け止めようじゃあ~りませんか♪ - へたれ芸人 2007-12-11 17 57 15 ページタイトルが思いっきり「虹裏神姫」ってなってんだから察しそうなものだろうに・・・ - 名無しさん 2007-12-11 19 07 54 わざわざ他所から来たお客様に配慮するような事か?ページタイトル的にも虹裏(img)神姫スレに行く人向けの所だと思ってたんだが - 名無しさん 2007-12-11 19 10 24 いや、一般の人も見てるんじゃないかな。大半の人は面白がって見てるって口なんだろうけど - 名無しさん 2007-12-11 19 19 40 いやだから普通の人が見てても別に関係なくね?面白がってPOMってるだけだってんなら特に - 名無しさん 2007-12-11 19 22 51 どっちにせよ極まったエロ記述への注意は当たり前だけど、かといっていちいちお客様への配慮とかは要らないだろうって事だろう。「虹裏」神姫と冠してる時点で元々一般向けに神姫を広める為に存在してるwikiじゃないし - 名無しさん 2007-12-11 23 48 13 一般の武装神姫ファンが検索でここへたどり着いたとき、「虹裏」という言葉の意図するところ(虹裏=二次元裏=ふたばちゃんねるの…以下略)については分からないと思う。つまり、基本的なことすら分かっていないお客さんが紛れこんでしまうような検索でたどり着ける場所にあるwikiという時点で、対外的なことを意識せざるを得ない。なぜかって?お客さんであっても編集したい内容や気に入らない内容であれば編集・変更できてしまうから=編集合戦を勃発させられるからね - どこかのwikiの管理人 2007-12-13 03 37 36 文章の表現的な意味での注意は必要だが、気になるのはそれが行きすぎて内容にまで波及する危険がないか、って事なんだ。それこそimg行く気のない奴が「エロとか飲んだくれとかゆるさないよ」って好き勝手にオレ設定で編集しだしたら編集合戦や魔境化が始まって、元からのimg住人は敬遠するしこれからimgスレに参加しようって人は混乱するだろうし。そんなことになったら本来の趣旨である改造技術や小物アイテム情報は無駄になるし、そもそも「虹裏」神姫ってサイト名自体無意味になりかねん - 名無しさん 2007-12-13 09 19 26 結局女性にとってここは見に行きにくいという事なんだろうか?ここは女性の意見も聞いてきたいところなんだけど - 名無しさん 2007-12-13 18 14 19 ウチの妹にそこんとこどうよ?って聞いてみた。「そんなことに配慮する暇があったら働け」だそうです。 - 「」 2007-12-13 18 30 25 そもそも虹裏見に来るような女子「」や女子あきなら気にしないだろうし、注意文の内容よりも妙に「女性に配慮しろ」みたいな書かれ方が何か変だなぁ、と思った - 名無しさん 2007-12-13 19 07 00 というか何で配慮しなきゃって話になってんのかが分からん。女性オーナー増やしたいとか、そういう目的のまとめサイトじゃないだろ。 - 名無しさん 2007-12-13 19 13 07 ↑念。つうか虹裏住人じゃない一般オーナーが「虹裏とか知らない、エッチなのはいけないと思います!」と捻じ込んでるようにしか見えん - 名無しさん 2007-12-13 19 22 50 とりあえずTOPにふたばの事書いておけばいいのでは - 名無しさん 2007-12-13 20 53 08 配慮云々もそうだけど、やたらと「女の人も見てるから〜」みたいな注意を書きたがる理由が分からん。そんな特別に強調しなくても性別関係なく露骨な表現を嫌がる人はいるし、賢明な人間ならむしろこれだけ言われてるんだからいい加減このwikiの性質に気づいて、黙ってウィンドウ閉じそうなもんだが - 名無しさん 2007-12-14 08 55 23 神姫のキャラデザに「こいでたく」氏を起用、なんて面白そうでは?いや、マジで。それとも、ライバル誌のHJで描いてるからダメ?…ホントに出たら即買いなんだけどなぁ。となると、愛称は「え●子」?間違っても「J●F子」と呼んではいけない(笑) - 743 2007-12-23 01 41 12 アイドル型MMSのアイ子が出たのだから、思い切ってセーラー服型MMSとかスク水型MMS、なんてでてもいいんじゃない?いや、是非とも出して欲しい!キャラデザは「こいでたく」氏で ←しつこい - 743 2007-12-23 01 44 10 「なんでもコメントコーナー」とはいえここでそんなことを唐突にかつ精一杯力説する意味がよく分からんのだが・・・ - 名無しさん 2007-12-23 19 51 12 残念ながらアイ子は蝶型MMSなんだぜ - 名無しさん 2007-12-24 14 03 33 明けマスィーンズ 今年もよろしくHENTAI - 名無しさん 2008-01-01 18 03 37 こちらこそよろしくHENTAI - 名無しさん 2008-01-01 23 41 36 うぃきぺでぃあからリンクが張ってあるんだけど削除すべきかな、これは - 名無しさん 2008-01-16 19 53 50 セーラー型・・・それ何てメダロ(ry - 名無しさん 2008-01-16 20 10 37 シスター型にナース型……衣装でいいじゃないの - 名無しさん 2008-02-13 18 41 01 黒姉ってプロト黒子と黒ババァの両方で使われるって書いた方が良いのかな? - 名無し 2008-04-01 07 53 01 もう誰も見てない - 名無しさん 2008-05-08 18 50 51 ~ってどうなのよ?って書き込みがある度にココ見ろってレスがあるんだからちょっとは更新した方がよいのかしら? - 名無し 2008-05-09 17 50 35 更新した方が良いとは思うけど自分ではバトロンくらいしか弄らないな - 名無しさん 2008-05-11 02 35 20 気が向いたときに弄ってる。リペ良悪とか足してみた - 名無しさん 2008-05-25 00 01 26 色々忙しくてカラーレジン実験できなくてごめん、秋ごろになったら暇が出来るから更新するね - 名無しさん 2008-07-27 21 53 46 9弾以降の記事を中心に加筆・修正。結構大幅に修正した記事もあるので変だったら再修正おねがいします - 名無しさん 2008-08-01 06 57 40 リンク追加。武装神姫の公式サイト(非神姫NET)のRSSは拾ってません。あった方がいいかしら - 名無しさん 2008-08-02 05 28 19 RSSじゃなくて、TOPページの画像化ってことですね。公式サイト(フィギュア入口)のRSSも神姫NETのRSSも実は一緒なんですよね、あれ…しかも神姫NETの方で統合してるから、フィギュア関連のニュースは配信されていないという(爆)。どなたかお気づきでしたらコナミ山さんへ教えてあげてくださいなー - 毛モテモテック 2008-08-08 19 06 57 最近キャラ事典に虹裏じゃ見たこと無いような設定書き込んでる人がいるが俺が見たこと無いだけかその人の脳内虹裏設定なのか - 名無しさん 2008-08-31 09 12 51 またババア増えるのか・・・ - 名無しさん 2008-08-31 19 45 51 最近と言えば黒プリンか?深夜とかによく見かけるが - 名無しさん 2008-08-31 21 25 41 ぶっちゃけていうならエッちゃんのツッコミ設定や10弾二人の設定なんだけど 全集に載っけるほどキャラ固まってないと思うんだよね - 名無しさん 2008-09-01 00 29 09 鳥子なんて存在すら知らない・・・ - 名無しさん 2008-09-01 03 10 31 ランちゃんの縦にしゃべる設定もそれほど固まってないしね・・・ - 名無しさん 2008-09-01 05 33 01 エポパテの使い方についてはまた後日、今日は銘柄紹介だけ - 名無しさん 2008-09-15 17 42 41 最近悪い意味でここがたまに話題になるけど、こっちに書き込む人少ないな・・・ - 名無しさん 2008-10-13 23 20 47 キャラ全集更新すれば変な子の定着狙い乙!だし、小物類は最近更新出来るようなネタもないし…… - 名無しさん 2008-10-16 02 23 07 小物はあると言えばあるがほとんどリーメント関連になってしまうぜ - 名無しさん 2008-10-16 04 29 40 2008-10-17に関連リンクに追加されてるのは宣伝かしら?デリートしてもいいでしょー? - 名無しさん 2008-10-17 20 14 50 小物関連は追加しても削除されることが多いからなぁ・・・(特に頭部) - 名無しさん 2008-10-19 17 59 40 衣類とか結構増えてきたからサイドバーとかに衣類項目欲しいな 普通に編集とかできたっけ? - 名無しさん 2008-10-22 21 14 02 できたと思うよー しかしキャラ全集はどうにかしたいが客観的な編集と編集合戦回避が難しいなぁ - 名無しさん 2008-10-22 22 53 55 キャラ全集は適当に更新で良さそうだが色々難しいからね 時間帯とかタイミングによって自分でも見たことないキャラとか古い空気キャラとかもたくさんいるし - 名無しさん 2008-10-23 04 42 33 衣類項目を追加しました(同時にその他から衣類関連を移動) - 名無しさん 2008-10-24 03 26 24 アルトレーネ - 名無しさん 2010-06-21 07 07 45 キャラ紹介の容量が無くなりかけてるから神姫と派生キャラを分けました。ついでに紹介文も少し変更したり追加したり - 名無しさん 2010-07-14 01 21 49 保管庫なくなった? - 名無しさん 2010-11-03 22 21 09 保管庫の鯖がサービス終了したみたいだけどどこかに移動済み? - 名無しさん 2010-11-04 02 34 58
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1313.html
{裏の世界の戦闘} 夜中、満月がギラギラと光っていた。 そんななかに俺と右肩に座っているアンジェラスはある店の前に居た。 「おい、アンジェラス。本当にいいのか?」 「はい。これは私が決めた事ですから」 「ま、お前がそこまで言うなら仕方ねぇ~けど…無理だけはするんじゃないぞ」 「優しいですね、ご主人様は」 煙草を地面に落とし、靴の裏で踏みつけ火を消す。 今、俺とアンジェラスが居る所はアンダーグラウンドの神姫センターの目の前。 あの初戦のバトルの後、アンジェラスがこっそりと俺にこう言ったのだ。 『アンダーグラウンドで闘ってみようと思います。ご主人様が作った違法改造武器で…』 最初はなに血迷った事を言ってくれやがったのかと思い俺はアンジェラスを注意したのだが、頑固なアンジェラスは引かなかったため、俺が押し負けてしまい…故にこんな所に居る。 クリナーレ達に気付かれないように家を出て、オヤッさんの所に行き、神姫センターが何処にあるか聞き出しここに着いたわけ。 「にしても、キッタネェ~なぁ~」 表の神姫センターみたく綺麗じゃなく汚れている。 所どころヒビもはいってるし、今にも倒壊しそすな感じだ。 まぁそんなもんだよなぁ。 アンダーグラウンドだから神姫センターの管理も出来ていない。 ぶっちゃけた話し、物凄く汚い。 ゴミはそこら辺に散らかっぱなし。 入り口の自動ドアは壊れてて半開き。 電灯もチカチカと点滅状態。 文句なしの酷さだぜ。 「そんじゃ、入ってみるか」 「はい!」 半開きになってるドアに入り奥に行く。 すぐそのばに汚らしい筺体がいくつかあった。 他のオーナー達の年齢層を見ると15歳~40歳ぐらいかな。 俺は闘っている筺体を覗く、そこにはもの凄い光景がひろがっていた。 神姫同士が闘ってる事には変わりないが、無我夢中で敵である神姫を壊しあっているのだ。 足が片方なかったり、両腕がなかったり、神姫の体からダラダラとオイルみたいなもの出ている…人間でいう血だな。 筺体の中も凄い。 マグマステージや周り囲んだ電気ヘェンスやトラップだらけのステージ、その他諸々。 過激なステージばかりだ。 バキッ! ん? 何か踏んだ音がしたぞ。 足元を見ると、そこには何処かの神姫の右腕が転がっていたのだ。 「ご主人様…」 「………」 大方、バトルに負けた神姫の残骸だろうよ。 バトルで負けて生きて帰ってこられたとしても、負けたオーナーは負けた事に腹が立ちその怒りを神姫にぶつけて神姫を壊す。 投げつけや踏みつけ、etc,etc. 八つ当たりもいいところだ。 まぁここでは『常識』だからしょうがないさぁ。 「ケッ。残骸がそこらじゅうに散ばってやがる」 歩く度にバキィだのガキだのゴリだのと五月蝿くてかなわん。 それに少々歩きづらいし。 「ご主人様…あの………」 「あ?何か用か??」 「先ほどからご主人様が踏んでるのは…」 「武装神姫の残骸だが、何か?」 「!?ご主人様…そんな言い方は…」 アンジェラスの顔から元気が抜けたように悲しいとも悲痛ともいえる顔になっていた。 それもそうだろ。 同じ仲間だった物を今俺は歩く動作をするたびに踏みつけ破壊していくのだから。 …だから連れてくるのは嫌だったんだ。 ここに来る時、大抵は予想出来ていた事なのだからな。 しかし、ここに来た以上少し厳しくアンジェラスに言っておかないと。 「『そんな言い方』って、どんな風に言って欲しかったんだ?」 「それは!…その…」 「優しく言って欲しかったか?残念だけど今回はそうはいかない」 「ご主人様…」 「教えてやるよ。今俺が歩きながら踏んでいるのは、元はお前と同じ玩具の残骸だ。残骸=ゴミ。ゴミを踏んで何か悪いか?」 「ひ、酷い!」 「酷い?おいおい、何勘違いしてるのか知らんがお前等の存在価値は人間のお遊戯道具にしか過ぎないだよ」 「そんな…そんな事って」 「はぁ~いい加減理解しろ。俺は『者』、お前は『物』。同じ言い方でも意味が違うだろ。これが人間と人形の違いだ」 「………」 「やっと理解したか。所詮、お前等は物なんだよ」 俯いて黙ってしまったアンジェラス。 この程度のキツイ言い方でこんなに凹むのなら、もう帰った方がいいかもしれない。 こんな調子でバトルなんかした瞬間、アンジェラスはバラバラに破壊されるのがオチ。 相手は必ず違法改造武器を使ってくるのが目に見えてくるからだ。 俺は歩みを止め右足を軸にして引き返そうとした瞬間。 「…ご主人様の本音の意見を聞かせてください」 小声で言うアンジェラス。 元気が無いのが見え見えだ。 「本音を言った所で今のこの惨状は変わんねーぞ」 「お願いですから言ってください!」 今度は大声で言いやがった。 涙目になりながら真剣な顔つきで俺を見るアンジェラス。 う~ん、まぁいいか。 「まぁーそうだな。ブッチャけた話し、本音は結構ムカつく。いくら何でも限度っていうものがある。しかも神姫には心があるという。だからこうやって神姫の残骸を踏み歩いてのは正直不愉快だ」 「それがご主人様の本音ですか?」 「信じたくなければそれでもいいよ。一応俺は本音を言ったつもりだ」 「そうですか。なら私はご主人様を信じます。もしその本音が嘘だったとしても」 「だから本音だって。本音に嘘もクソもあるか」 「クスッ。そうですね」 「まったく、お前という奴は…」 どうして俺という存在を気にかけるんだ? アンジェラスの奴は何故そこまで俺という一人の人間にこだわる? オーナーだからか? いや、それは違うなぁ。 もっと何か深い理由があるはず。 でも霧がかかったように皆目解らない。 …もう少し一緒に暮らせば解るかもしれない…かな。 「マイちゃん!マイちゃん、しっかりして!!」 ん? どこからか女の子が泣き叫ぶ声がしたな。 声がした方に行くと、中学生ぐらいの女の子が両膝を地面に着き、両手でボロボロになった神姫を抱きかかえていた。 その女の子の周りには同じぐらいの年齢の男の子達が数名。 あぁ~、なるほどね。 あの女の子の神姫を男の子達の神姫でリンチしたな。 「なんて酷いことを…ご主人様ぁ」 「ほっとけ。余計な事に関わるとろくな事にならないぞ」 「…でも!」 キッ、と俺に訴える目で見てくるアンジェラス。 …はぁ~、まったくどうしてこうなっちまうんだ。 仕方ない、行くか。 俺はズカズカと男の子達の間を割り込み、女の子の方に行く。 「な、なんだよお前!」 「なにしきたんだよ!」 男の子達が一斉に珍入者の俺に文句を言ってきた。 ウザイ。 ここは一つ。 「ウッセェ、黙れ。ブッ殺されたくなかったら黙ってろ」 睨みをきかせながら言うと男の子達はビクッとして黙ってしまった。 所詮は悪ガキの集まり。 一発で脅せばあっさりと身を引くに違いない。 「大丈夫ですか?」 アンジェラスは女の子の目線に合わせるように移動し、女の子を慰めようとした。 「マイちゃんが!マイちゃんがこの人達に無理矢理バトルさせられてっ!!」 「ちょっと見せてみ」 俺は腰をかがめマイという神姫を見た。 猫型マオチャオか。 …うわー、このヤられかたは酷いなぁ。 右腕・右足・左足が完全に切り裂かれ、身体じゅうは傷だらけ、他にも所々に切り傷がある。 これは完全に違法改造武器でヤれたな。 「ご主人様!マイちゃんを助けてあげてください!!」 「無理だ。今から俺の家に持ち帰って修理しようとしても、途中で中身のCSCが機能停止し壊れるのがオチだ」 「そんな!?」 再び悲痛な顔になるアンジェラス。 何故他人の神姫を心配する事ができる。 同じ人形仲間だからか? …ったく、しょうがねぇ~なぁ。 俺はポケットから携帯電話を取り出し、オヤッさんに電話した。 「よおー、閃鎖じゃねぇーか。いったいどうした?」 「ワリィんだけどよ。今すぐアンダーグラウンドの神姫センターに来てくれないか?」 「別にいいが…。なんかあったのか?」 「あったからこうして電話してるんだよ。至急来て欲しい」 「分かった。閃鎖の事だから、また何かやらかしたんだろ」 「いいや、まだ何もヤッてない。ちょっと猫型マオチャオの神姫の修理を頼もうと思って」 「修理?お前、負けたのか?」 「俺は猫型マオチャオを持ってない。どうでもいいから早く来てくれ。金は成功報酬という事で」 「分かった、すぐに行く」 電話の電源ボタンを押してポケットにしまう。 そして女の子の方に再び視線を向ける。 「おいガキ。お前の名前は?」 「グスッ…ヒク…」 「泣いてちゃ解らん。お前の神姫を治してやるから名前を言え」 「梶原…由香里…」 「由香里だな。さっき俺の電話の会話通り、今からオヤッさんが来る。それまでそのマイをしっかり持ってけ」 「あ、…はい…」 涙声で返事する由香里。 まぁ無理もない。 自分の大切な神姫がこうもボロボロにされたのだからな。 「ご主人様。私、この人達許しません!」 「はっ?お前、何を言って…まさか!?」 「私はこの男の子達の神姫にバトルを申し込みます!」 だぁー、勘弁してくれよ! これ以上の揉め事には介入したくないんだ。 アンジェラスの事だから何かヤらかすと思っていたが…やっぱりヤらかしやがった。 「なにこいつ?神姫自らが勝負を申し込んできたよ」 「オモシレェ、やってやろうじゃないか!」 あぁ~あ、こいつ等もやる気だしちゃったよ。 こりゃあ後に引けないな。 「おい、アンジェラス」 「ごめんなさい、ご主人様。お仕置きは後で受けます。だから今だけは私の好きにさせてください」 真剣な顔で言うアンジェラス。 こうなったこいつはもう止まらないだろう。 …フッ、仕方ないなぁまったくもー! 「アンジェラス、こっち向けや」 「何ですか?」 ビシ! 「イッターィ!何でデコピンするんですか!?」 「なにが『今だけは私の好きにさせてください』だ。フザンケなよ、お前のオーナーは俺だ。勝手に決めつけてんじゃねーよ」 「ご主人様…」 「相手は俺が決める。テメェはバトルに備えて気持ち整えとけ」 「ご主人様!」 アンジェラスの顔は喜ぶ顔になった。 お前のせいだからな、こんな事になっちまったのは。 「おい、クソガキ共。あのマオチャオをボロボロにさせた奴は誰だ」 「俺だ」 一歩前に進んで進言してきた奴はいかにも悪ガキという名に相応しいツラと服装だった。 「テメェか、今からテメェにバトルに申し込む。どちらかの神姫が完全破壊するまでのデッドエンドバトルだ」 「いいぜ、あそこに見える筐体で待ってるぜ。青二才」 青二才? 俺が年上なのにか? マジでムカつくクソガキだ。 バトルが終わった後にシメてやるか。 そんな時だった。 丁度良くオヤッさんが来た。 「おーい」 「Good Timingだな、オヤッさん」 「で、どれを直してもらいたいんだ?」 「あの由香里という女の子が持ってる猫型マオチャオだ」 「分かった。ほ~ら、お嬢ちゃん。おじちゃんと神姫を直しに行こうねぇ~」 穏やかな声でオヤッさん言うとあからさまに嫌な顔つきになる由香里。 まぁ、そりゃそうだよな。 いきなり知らないオジさんに声をかけられたんだから。 ある意味、今から女の子を誘拐でもしようと、している光景にも見える。 オヤッさん…哀れだ。 ここはフォローしてやるか。 「なぁ由香里」 「グスン…なに?」 「由香里はマイを直したいんだよな」 「うん!」 「ならそのオジさんの言う事を聞いて行け」 「でもぉ…」 「俺の言葉を信用してマイを直しに行くか、信用しないでそのままマイを死なすかは由香里が決める事だ。俺とアンジェラスはマイの仇を討ちに行く。だから先にこの筋肉ムキムキのオジさんと行け。後から俺も行くから」 「…うん、分かったぁ。必ず来てねぇ」 「そー決めたのなら早くいけ。時間は待ってくれないぞ」 「うん!」 泣顔でもオジさん…もといオヤッさんと一緒に行く由香里。 よし、後はバトルだけだ。 「行くぞ、アンジェラス!」 「はい!ご主人様!!」 俺とアンジェラスは筐体に向かって歩きだした。 はてさて、いったいどんなバトルを繰り広げことになるのやら。 …。 ……。 ………。 奴等の筐体はすぐに見つける事が出来た。 あんだけクソガキどもの取り巻きが出来てるのだからな。 「遅いぞ。ビビッて逃げ出したと思ったよ」 「残念だったな、クソガキ。俺はテメェ等程落ちぶれていないんでね」 「この野郎!後悔しても遅いからな」 ガキの癖によく吠える。 俺はネックレスを外し一つのペンダントをアンジェラスに渡した。 「これは何ですか?」 「俺のペンダントだ。と言いたい所だが、これはただのペンダントじゃない。これはお前専用の武器でもあるんだ」 「私の専用武器!?」 「名はGRADIUS。万能型のお前には壱番適切な大銃剣だ」 「大銃剣?」 「あぁ。こいつはこの先端が別れている先からレーザーを撃つ事が出来る優れものだ。まぁ、こいつ持ってバトルフィールドに入ればGRADIUSの性能がお前の身体にインストールされる。それでこいつの使い方が解るだろう。サブウェポンはOPTION。リアパーツはリアウイングM‐88対消滅エンジン。アーマーはFORCE FIELO。アクセサリーはFREE SHIELD。こいつ等はまだ未完成だが、性能はそれなりに使えるはずさぁ」 「インストール…それって前にご主人様が言っていた」 「そう、神姫侵食だ。こいつにやれるとその神姫は必ず破壊されるとんでもないウイルスだ。気をつけろ。」 「はい!」 「それと最後の情報。相手はハウリンだ。壱番厄介なのは違法改造武器のソード・オブ・ガルガンテュア。あれは相当な攻撃力があるはずだ。多分、由香里のマイという神姫もあれでヤられたと思う。だから押さえ込まれるな。解ったか?」 「大丈夫ですよ。私を信用してください!」 「そこまで言うなら大丈夫だな。行って来い、俺のアンジェラス!」 アンジェラスを筐体の中に入れると筐体が動きだし低い音で機械が起動する。 頼むぞ、アンジェラス。 それと…絶対生きて帰って来い! アンジェラスの視点 私が筐体の中に入った瞬間世界が変わった。 どうやら今回のステージは荒れた荒野みたいです。 地面に落下した時なんか痛そう。 サブウェポン・リアパーツ・アーマ・アクセサリーは最初っからあるみたい。 それよりも早く武器を召喚しなくちゃ。 「GRADIUS!召喚!!」 そう言うと私の右手にグラディウスが召喚された。 これがグラディウス。 ご主人様が私用に作ってくれた武器。 とても綺麗で…とても攻撃力がありそう。 <Irregular Custom Weapon Installation Start> 「え?」 頭の中で女の声の電気信号が鳴り響いた同時に体中に電撃が走った。 い、痛い。 でもこのぐらいの痛さで嘆いては駄目です! 我慢しなければ! <Irregular Custom Weapon Installation Completion> 「アグゥ…結構しんどいです~」 少々疲れてしまいましたが、この程度なら大丈夫です。 「大丈夫か!?」 「あ!ご主人様、私は大丈夫ですよー」 「そうか、良かったぁ。神姫侵食には犯されていないようだな」 ご主人様の顔は見れないけど声だけでも安心感が得られます。 「おっと。アンジェラス、敵さんのお出ましだ」 「エッ!?」 私は振り返るとそこにはハウリンが居た。 右手には大きなソード・オブ・ガルガンテュアを持っていた。 確かにあれで斬られた時はひとたまりもありません。 気をつけないと。 「さっきも行ったけど、絶対に押さえ込まれるなよ!」 「はい!」 ご主人様は念を押すように言う。 よっぽど私の事が心配みたい。 でも嬉しいです。 ご主人様が私の事をちゃんと思ってくれるから。 これなら…頑張れます! 「さぁ来なさい!」 「………破壊する」 バヒュン! バヒュン! お互い接近し間合いをつめる。 私はご主人様から渡されたグラディウスを握りしめ敵を睨みつける。 敵は相変わらず無表情で突撃してくる。 そして目には光りが灯ってなかった。 これが違法改造武器を使い過ぎて神姫侵食に飲まれた目…。 …あまりにも酷すぎます。 私は…絶対こんな風になりたくない! だって、ご主人様が悲しむから! 「ヤァーーーー!」 「…ンッ!」 ガキャ! 敵のソード・オブ・ガルガンテュアと私のグラディウスがぶつかり合い火花が飛び散る。 ギリギリ! 力込め合い金属同士の擦れ合うのが耳に入る。 クッ!? なんて力! 前に行った普通の神姫センターで闘った時よりも力が強い。 いいえ、強すぎます!? ガギャギャギャギャーーーー! バキン 「クウッ!?」 力に負け、グラディウスを弾かれてしまいバランスを崩してしまった。 この体勢ではマズイです! 私は一旦、リアウイングM‐88対消滅エンジンを使って急降下する。 敵のハウリンも私を追い掛けて急降下してくる。 でもスピードは私の方が上です! 「スピードアップ!」 <SPEED UP ONE> キュィィィィバヒュンーーーー!!!! 「キャッ!」 スピードを一速を上げただけで、かなりのスピードが上がり私は驚愕した。 これが違法改造武器…。 なんていう性能なの!? でもこの性能のおかげで敵との距離がかなり離す事が出来た。 「当たって!」 <ROPPLE LASER> ピュピューン! 私はグラディウスを敵に向けてROPPLE LASERを撃った。 円状のレーザーで遠くになるにつれ円状の面積が広がっていく。 こんな広範囲型のレーザーなら大抵の神姫ならあったてしまう。 それに私の後ろに横一列に並んでるOPTIONもROPPLE LASERを撃つ。 これだけの弾幕なら避けれないでしょう。 「………」 敵のハウリンはROPPLE LASERを避けようとした…が。 バシッ! あまりにも広範囲すぎて避けきれず左腕に命中してしまった。 …しかし。 バチバチ、バチュン! 「なっ!?」 そんな!? 左腕ごとROPPLE LASERで切断されても、痛い顔もせずに突っ込んでくる! 駄目、回避が間に合わなっ!? ブオン! バシン! 「アグッ!」 敵のソード・オブ・ガルガンテュアが見事に私に命中した。 でもFORCE FIELOとFREE SHIELDでなんとか守れたが、あまりにも強い衝撃で私は地面に叩き落された。 「カハッ!?…ウ、ウゥ…ッ…」 直接地面に叩きつけられたために背中から全身にまで強烈な痛みが走る。 い、息が吸えない。 「ゲホッ!ゴホ!!」 強制的に咳き込みをしてしまい、敵を見る事が出来ない。 それに苦しくて動けない。 FORCE FIELOとFREE SHIELDが起動していないという事はさっきの一撃で壊されてしまったという事。 もし次の攻撃を受けてしまったら…私は。 ズガン! 「ウッ!?」 腹に衝撃が走った。 苦しくても無理矢理顔を動かし敵のハウリンを見る。 するとそこには左足で私を踏みつけていて、右手に持ってるソード・オブ・ガルガンテュアでトドメを刺そうしていた。 駄目、ヤられる! なんとかして避けないと! 右腕は動かせないけど、左腕を動かす事が出来ます。 だから左腕で敵の足を殴ればバランスを崩して狙いがハズレる筈です。 それなら! 「何処でもいいから、今すぐCYCLONE LASERを使え!」 ご、ご主人様!? ご主人様が私にアドバイスしてくれた。 でも何故、遠距離攻撃のCYCLONE LASER。 グラディウスは右手に持ってるけどピクリとも動かす事が出来ない。 どう考えても避けた方が速い。 どうしよう!? ご主人様を信用してCYCLONE LASERを撃つ! やっぱり避ける方が先です!
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ウサギのナミダ ACT 1-31 □ 翌日。 俺はいつものように午前の遅めの時間に、ゲームセンターに向かった。 ついに虎実との対戦だ。 虎実のバトルはよく側で見ていたから、まだ一回しか対戦していないという実感はない。 ティアと戦うために、納得いくまで技を練り上げたという。 それだけでも興味は尽きない。 はたして、虎実はどんな武装神姫になったのか。 駅前で、久住さんと合流する。 彼女も、彼女の神姫・ミスティも、ティアと虎実の対戦は是非観たい、と熱望していた。 あのゲーセンには、感情的に入りづらいので、久住さんが同行してくれるのは心強い限りだった。 ほどなくして、ゲーセンの入り口にたどり着く。 入り口をくぐる。 バトルロンドのコーナーにいるすべての客が俺たちに視線を向けた。 ランキングバトル一位の大城と戦うから、注目されているのだろうか。 それにしては、雰囲気が微妙な感じだが……。 そんな俺の思考を、大声が中断させる。 「あああぁぁっ!! 来た! やっと来た!! まったく君は、どこに行ってたんだよっ!!」 大騒ぎしながら、俺に近寄ってくる、その男。 忘れるはずもない。 「井山……貴様が何でここにいる?」 「決まってるだろ、アケミちゃんを返してもらうためだよっ!!」 そう言う井山の態度には、いつぞやのような余裕は微塵もなかった。 怒りの形相で、目をギョロギョロとさせて俺を睨んでいる。 口調はせっぱ詰まっていた。 俺は久住さんよりも一歩前に出て、彼女を守る位置に。 胸ポケットから、震えが伝わってきた。 俺は胸ポケットをそっと手のひらで隠す。 「くどいやつだな。何度来たって、ティアは絶対に渡さない。あきらめろ」 「うるさいっ! あきらめられるもんか! もうアケミちゃんしかいないんだよ! この間の一斉取り締まり以来、酷い目に遭ってるんだ! 雑誌の連載は打ち切られて、残りのギャラをもらうどころか、とばっちりで怒られる! 神姫風俗はほとんどなくなっちゃって、馴染みの店も神姫もいなくなっちゃったんだぞ! それどころか、取り締まりの日は、逃げるのが大変だったんだ!」 どうやらこいつは、逃げるのだけは得意らしい。 「それからたびたび、警察には捕まりそうになるし、ボクにすり寄ってきた連中はいなくなっちゃうし! 神姫風俗なんか、もうろくな店が残っていないんだ! もう一ヶ月も、神姫でやってないんだぞ!? 頭がおかしくなりそうだ!」 ……こっちの方がおかしくなりそうだ。 周りを見回すと、どうやら井山は俺が来る前から持論を展開していたようだ。 ギャラリーは一様にうんざりとした顔をしている。 「君が素直にアケミちゃんを渡せば、こんなことにはならなかったんだよっ! だいたい、元々ボクの神姫なのに、それを返そうとしないなんて、盗人猛々しいにもほどがある!」 「……自分でゴミ捨て場に投げ捨てておいて、よく言う」 俺の呟きに、井山の顔が引きつった。 ギャラリーがざわめく。 「な、なにを……」 「貴様は、店の追っ手から逃げ切れそうになくなって、それを神姫のせいにして、ゴミ捨て場に投げ捨てた。 雨の中、電柱に叩きつけてな。 腕も脚も折られていて……そんなんでよく自分の神姫だなんて言い張れるな」 「き、君……見ていたのか!?」 「ああ。その後すぐに、お前が悪態をついていたゴミ捨て場で、神姫を見つけた」 ティアの素性は、もうばれている。 だから、ティアを見つけたときのことを隠しておく必要もなくなった。 いまや俺はなんのためらいもなく、井山と対峙できる。 そもそも、素性をばらしたのは井山だ。自業自得だな。 「ティアは確かに、貴様が捨てた神姫だ。 だけど俺が拾ったときには、壊れた精密機械ゴミのような状態だった。 俺は動けるように修理して、自分の神姫にした。 それなのに、まともに動くことがわかったら、また自分のものだと言い張って……盗人猛々しいのは貴様の方だ」 「ひ、開き直って……」 井山はもはや反論もできない様子だ。 もともとこいつの話は正論ではないのだ。 俺が追い込まれたあの時とは事情も違っている。 だから今回は、俺も余裕を持って対峙できる。 ギャラリーはざわついていた。井山の話が、結局は身勝手で一方的なものだということが分かったようだ。。 「く、クイーンとちょっといい勝負したからって……ちょっと雑誌で取り上げられたからって……いい気になりやがって……この、淫乱神姫がっ!」 俺の胸ポケットが、びくり、と震えた。 ティアが怯えている。 俺と本当に心を通じ合わせた今でもなお、この男とのしがらみは、ティアの心を縛り付けている。 こいつだけは許せない。 俺の心にも暗い炎が宿った。 「ふざけるな……この犯罪者」 俺の言葉は、地の底から響くようだった。 「貴様のような奴がいるから、いつまでも神姫たちの悲しみがなくならないんだ。 神姫虐待の犯罪者が、神姫の悪口を言う資格なんざない。 神姫の気持ちも考えず、ただ性のはけ口としてしか考えない貴様と、貴様と同類の連中を、俺は絶対に許さない」 「し、神姫の気持ちなんて……考える方がおかしいだろ!? 神姫なんて、人間様の言うことを素直に聞いてりゃいいんだよっ!!」 次の瞬間、ギャラリーから一斉にブーイングがあがり、井山に罵声を浴びせた。 当然だ。 周りにいるギャラリーは、バトルロンドのプレイヤーばかりだ。共に戦う神姫を、多かれ少なかれ、大切なパートナーと考えている。 今の一言で、井山はここにいる神姫とマスターすべてを敵に回していた。 「うるさい、うるさいっ! 自分の神姫をどんなふうに扱ったって、そんなの勝手だろ!?」 「うるさいのはお前の方だ!」 「この変態野郎が、いい加減にしろ!」 「お前に神姫マスターの資格はねぇ!」 「だいたい、神姫風俗の店から盗んできた神姫は自分のじゃないんじゃね?」 「神姫いじめて悦んでること自体がサイテー」 「普通、神姫風俗行ってたことを自分で言ったりしねぇよな。頭おかしいよ、こいつ」 ギャラリーはいつも無責任に当事者たちを罵倒する。 今回は俺ではなく、井山に向けられている、それだけの話だ。 だが、井山は追いつめられた。 この場で、井山の味方など誰一人としていない。 それでもなおこの場に踏みとどまっているのは、ティアに対する執念なのか。 井山は顔を青くしたり赤くしたりしながら、俺を指さしてこう言った。 「だ、だったら、バトルロンドで勝負だっ! アケミちゃんを賭けて正々堂々と勝負しろっ!」 何が「だったら」なのかよく分からないが。 井山の背後にいた大城が言う。 「アホか! そんな勝負、受けるまでもねぇだろ! それに、遠野たちになんのメリットもないだろが!?」 「もし、万が一、ボクが負けたら……ボクは二度と君たちの前に姿を現さない。アケミちゃんも諦めてあげるよ」 「それだけじゃ、賭けるものが釣り合わないだろ」 俺の言葉に、大城が驚いたようにこちらを見る。 続いてギャラリーがみな、俺に注目した。 「貴様が負けたら、警察に行け。そして、二度と俺たちの前に姿を現すな」 「遠野くん!?」 俺の後ろから、久住さんが悲鳴のように俺を呼ぶ。 俺は少し彼女を振り返った。 彼女が心配してくれるのは嬉しい。 言いたいことも分かる。こんな勝負、受ける必要がない、そう言いたいのだ。 だが、俺は井山と雌雄を決するつもりでいた。 ティアが奴への恐怖を克服しない限り、ティアの本当の安息は訪れない。 だったら、奴とのしがらみをここで断ち切るほかにない。 俺は、もう決心していたのだ。 久住さんは俺と目を合わせた。 彼女の大きな瞳に、俺のくそ真面目な顔が映っている。 久住さんはそっと溜息をつくと、俺から視線をはずした。 心配してくれた彼女には申し訳ない、と思う。 俺は井山の野郎に向き直る。 「どうだ。その条件が飲めるなら、バトルロンドで勝負しようじゃないか」 「そ、そんなことしたら、ボクが捕まっちゃうかも知れないだろ!?」 「だから、負けたらおとなしく捕まれ、と言っている。 警察には、ティアの過去の記憶も提出済みだ。解析も終わっていて、顧客も特定されているだろう。 貴様は神姫虐待の容疑で間違いなく逮捕される立場だ。 警察に逮捕された上で、自分の罪を反省し、二度と俺たちに前に姿を現すな」 「な、な、なんでこのボクが、たかが神姫のために、そこまで体を張らなくちゃいけないんだよ!!」 「俺はティアのために、すべてを賭ける覚悟をした。 貴様が仕掛けた罠を覆すためにな。 自分がティアのオーナーだと主張するなら……貴様もすべてを賭けて勝負に挑め」 「や、やっぱり……今回の神姫風俗の件は……君の仕業かっ!!」 「……俺はきっかけだったに過ぎないけどな」 井山の視線には憎悪すらこもっていた。 だがそれは逆恨みというものだ。 警察が神姫風俗取り締まりに動こうとしていたそもそもの理由は、井山が提供した、あの雑誌記事だったのだから。 結局は自業自得なのだ。 せっぱ詰まっていた井山だったが、不意に、表情を変えた。 いつものいやらしい、余裕の笑みをにじませる。 「いいよ、わかったよ。ボクが負けたら警察に行く。勝ったら、アケミちゃんはボクのもの。どちらにしても、君たちの前には二度と姿を現さない。 その条件でバトルしよう」 「……どういう風の吹き回しだ?」 「いいじゃないか。ボクが条件を飲むって言ってるんだからさぁ。すぐ始めようよ」 「貴様、神姫をつれてきてるのか?」 「ここにいるよ」 井山は、手に持っていたアタッシュケースを持ち上げて見せた。 何が入ってるのかと思えば、神姫だったのか。 「条件を飲むかわりに、ステージはボクが指定するよ」 「断る」 俺は即座に井山の意見を却下した。 ティアがまともに戦えないステージを指定されては意味がない。 「わかってるよ、アケミちゃんが戦えるステージじゃないと、ダメなんだろ? ボクが指定するのは……塔だ」 「……塔?」 ギャラリーがざわめく。 俺は記憶をたぐり寄せる。 塔ステージは人気の低い、かなりマイナーなステージだ。 確か、巨大な円柱状の塔の内部がそのフィールドである。 塔の内部はそこそこの広さがある。 外周部に螺旋状に階段がしつらえてある。 全体は強固な石造り。 明かりはたいまつによって、ところどころ照らし出されている。 天頂部は閉じられており、出入り口もない。 円柱状の巨大な密室だ。 特別な仕掛けもない。 なぜこの塔ステージが人気がないのかというと、面白味がないからだ。 飛行タイプの神姫は、最高速度も出せないし、機動も制限される。 地上タイプは身を隠すところもなく、縦方向への移動は螺旋階段のみ。 あらゆる神姫が、お互いの持ち味を発揮できないフィールドなのだ。 奴がこんなステージを指定してくること自体が不可解だ。ティアだけではなく、奴の神姫にだってメリットはない。 「どうだい? ここならアケミちゃんの機動を制限する訳じゃないし。壁走りだってできるよねぇ?」 「……!」 井山はバトルロンドに興味がないのかと思っていたが、そうではないらしい。 少なくとも、ティアの戦闘スタイルを知っている。 ある程度、俺たちを研究していると見るのが妥当か……。 身を隠すところがないのは不安だが、だからといってティアに不利なステージでもない。 井山の神姫がどんなやつなのかは気になるところだが、塔で有利な神姫というのはちょっと思いつかない。 俺たちが有利になりこそすれ、不利な要素は何もなかった。 唯一の気がかりは、奴が何を考えているのか、それだけだった。 「……いいだろう」 「うふふふ、それじゃあ、はじめようよ」 井山は大きな体を揺らしながら、筐体の方に歩いていく。 客たちは、汚いモノに触れるのをいやがるように、奴に道をあけた。 そんな客の態度を、井山は気にもとめない。 「遠野くん……こんなバトル、受けてもよかったの?」 久住さんが心配そうに尋ねてくる。 「ああ。あいつをのさばらせたままじゃ、ティアはいつまでも怯えて暮らさなくちゃならない。ここで奴に引導を渡して、ティアの過去も断ち切る。 これは、どうしても必要なバトルなんだ」 「でも……ハイリスク過ぎるわ」 「わかってる……でも、リスクが高いのは奴も同じだ」 いままで必死に逃げ回っていたのに、このバトルに負けたら、警察に素直に捕まらなくてはならない。 井山の人生においては、大きな事件になるだろう。 お互いにハイリスクなものを賭けたバトル。 それでも俺は一歩も引く気はなかった。引くわけには行かなかった。 「ティア……」 おれは胸ポケットでうずくまる神姫に声をかける。 「怖いか?」 「はい……」 ティアの声は震えている。 実のところ、俺の心は怒りで煮えくり返っていた。 あんな奴のせいで、今もティアはこんなに怯えている。 あいつだけは、絶対に許さない。 「いいか? これから井山とバトルする」 ティアがびくり、と身体を震わせた。 「だが、怖がることなんてない。 昔のお前は一人きりで、奴の言うなりだった。 今は違う。俺がいる。お前と一緒に戦う。あんな奴には決して負けない。 だから……勇気を持て」 ティアが俺の方に顔を上げた。 瞳に涙が滲んでいた。 「戦うのはお前なのに……勝手に奴とのバトルを決めて、ごめんな」 「……いいえ」 ティアは弱々しく微笑んだ。 胸が痛くなる。 このバトルは、ティアには気の進まない戦いだ。 なのに俺はそれをティアに強要する。 だから俺はエゴイストだというのだ。 だが、この戦いがティアに必要だという考えも揺らがない。 一連の騒動に決着をつける最後のピースは、ティアが自らの過去と決別することだ。 そうしなければ、ティアはいつまでも自分の過去を引きずってしまう。 このバトルで、ティアの過去を断ち切る。 俺は強い決意を持って、筐体の前に座った。 「おい、遠野」 「大城……」 大城は俺の後ろにやってきて、くそ真面目な顔をしている。 「すまんな、お前たちとのバトルは、これが終わるまで待っていてくれ」 「……勝つんだろうな?」 「負ける気はさらさらない」 俺も真面目に受け答えする。 大城は頷いた。 このバトルに勝たなくては、長く目標としてきた大城たちとの対戦も実現しない。 俺が決意を新たにしていると。 なんと虎実が、ティアに声をかけた。 ■ マスターが何の考えもなしに、こんなバトルを受けるとは思っていない。 思っていないけれど。 心に刻み込まれた恐怖は、簡単には拭えない。 あの人の……かつてわたしのお客さんだった人の顔を見るだけで、恐怖に身がすくむ。 条件反射のようなものか。 あの手がわたしを掴んだ瞬間から、もう逃げようのない虐待が始まるのだと、どうしてもそう考えてしまう。 マスターは、そんなわたしに気を遣ってくれた。 それはとても嬉しいのだけれど。 でも、マスターの言うような勇気は、まだ絞り出せていない。 バトルに挑む心ができないまま、わたしは筐体の上に立つ。 身体が小刻みに震えているのが分かる。 マスターの指示通りに戦えば、勝てると信じているけれど。 どうしても、どうしても、怖くて怖くて仕方がない。 このままでは、勝てる試合も勝てないのではないか……。 そんな弱気が心に浮かんだ時。 わたしを呼ぶ声が、聞こえた。 「ティア!」 「……え?」 「アンタがあんな奴の神姫に負けるはずがねぇ! さっさと勝って、アタシと対戦だ。忘れんな!!」 驚いた。 虎実さんがこんな風に私に声をかけてくれるなんて、初めてかも知れない。 虎実さんは、まっすぐにわたしを見つめてくる。 真剣な表情に、わたしは息を飲む。 マスターの後ろから、別の神姫の声が聞こえてきた。 「そうよ、自信を持ちなさい! あなたは、この『エトランゼ』にも勝てる、あの『クイーン』とだって渡り合える実力があるんだから!」 ミスティ。 彼女はいつもわたしの心配をしてくれる。 そして、いつの間にかマスターの後ろに来ていた、四人の少女たち……久住さんの弟子?の四人の肩の上から、次々と声がかかる。 「ティア、がんばって!」 「また、あのきれいなバトルを見せて下さい!」 「勝てる、勝てるよ!」 「あんな奴に負けないで、ティア!」 ライトアーマーの神姫たち。 会話するのも初めての彼女たちが、わたしを激励してくれている。 どれほど驚いたことだろう。 どれほど嬉しかったことだろう! わたしは、驚きに見開いていた目を、一度伏せる。 そして再び目を開いたとき。 恐怖に怯える気持ちは、小さくしぼんでいた。 「ありがとう……みんな」 ずっと、独りだと思っていた。 マスターのところに来たときから、わたしは誰にも迷惑をかけないように、独りでいなくちゃならない、そう思っていた。 だけど今は、仲間がいる。 わたしを認めてくれる友達がいる 折れそうなわたしの心を支えてくれる。 アクセスポッドに歩み寄る。 向かい合う相手のマスターは、どうしても怖いけれど。 今は、マスターと仲間たちがくれる、勇気の方が勝っている。 わたしは戦える。 このバトルに勝って、約束を果たそう。 □ 仲間ができた。 俺たちを信じてくれる仲間は、何よりかけがえのない存在だ。 俺は仲間たちに支えられて、絶望の淵から立ち上がることができた。 だから、ティア。 お前も仲間たちの言葉を胸に、勇気を持って走り出せ。 お前が走れるのなら、俺が勝利への道を示してやる。 そして、この事件のすべてに決着をつけよう。 「……準備はいいか?」 俺は井山に尋ねる。 相変わらずの、薄気味悪い笑み。 「いいとも。はじめよう」 俺と井山は同時にスタートボタンを押した。 筐体に今回のフィールドである「塔」が浮かび上がる。 対戦カードが表示される。 『ティア VS クロコダイル』 『GET READY …… GO!』 塔の内部が表示される。 薄暗い塔の中、ティアがたたずんでいる。 どこか、不安な表情。 塔の中は静寂に包まれている。 奴の神姫は…… 瞬間、井山の耳障りな叫びが響きわたった。 「ひゃははははは! かかった、かかったね!? もうこれで、ボクの勝ちさ! さあ、アケミちゃん、思いだしなよ。 これが、ボクの神姫だ!!」 その叫びと共に。 塔の上の方から。 奴の神姫が姿を現した。 次へ> トップページに戻る
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戦うことを忘れた武装神姫・番外編 ちっちゃい物研・商品案内-2 注)当然ですが、以下の内容はすべて当方の脳内生成物であり、 現実には存在しませんので。。。 <東杜田技研・新製品のご案内-2> このたび、弊社の小型ロボット向け機器ブランド「HT-NEK」では、 「武装神姫」向けの機器を展開することになりました。 先日発表いたしました和調クレイドル「和(なごみ)壱型」に続き、 診察室型クレイドル「さわやかしんさつしつ」を発売いたします。 〜武装神姫専用クレイドル・「さわやかしんさつしつ」の主な特徴〜 ■和(なごみ)壱型同様、弊社の小型機械技術研究製作部が設計。 さらなる安定性を追求しました。 ■実際の診察室同様、各種処置を行うことができるよう、各社製品に 対応させたベースユニット。 ■神姫による他の神姫の補修が出来るよう、神姫サイズの補修工具を 新たに開発し、その中より基本となるセットを同梱。 ■収納ケースは「診療所」を模した外観の専用品。独特の形状であり ながら、「和(なごみ)壱型」でも採用した、使いやすい二段式の ケースとなっています。 ■初心者には使いやすく、達人にも飽きが来ない、独自の専用ソフト 付属。(WindowsVista2037・MacOS21 両対応。) 詳細は、下記を参照して下さい。また、新たな情報は随時公開いたし ますので、HPにてご確認下さい。 <武装神姫専用クレイドル「さわやかしんさつしつ」> ・対応武装神姫 現在発売中の全武装神姫(純正クレイドルが使用可能である神姫に 限ります。) ・インターフェース 専用ケーブルによりUSB3.1にて接続 (注:本製品はUSBより電源供給を受けますので、電源の弱い一部 モバイルPCは使用できません。また、ハブをご利用の方は、外部 電源を用いるタイプのハブをご利用下さい。) ・対応オプションパーツ 弊社発売予定品 「リアルスキャナー」(放射線不使用のレントゲン) 「工具セット(神姫用)・追加」(追加ドライバDVD付き) 「工具セット(神姫用)・外科・整形外科」 「工具セット(神姫用)・プロフェッショナル」 「神姫といっしょ・神姫用端末」(カルテを作製できます) エルゴブランド 「DXベッド型クレイドル」(接続することで、病室を再現できます) (そのほかに付きましては、順次調査の上、HPにて公開する予定です。) ・付属装置・付属品 マニュアル、神姫用補修工具セット「基本」、神姫用診察机、神姫用白衣、 専用接続ケーブル、ドライバディスク、専用ケース(二段仕様) ・付属ソフト(ドライバDVDに同梱) 「お医者さんプリーズ!(武装神姫学習用ソフト・補修編)」 「ごはんのじかん(バーチャル食事体験)」 「THE バトル(戦闘シミュレータ)」 ほか ・動作条件(ドライバ・付属ソフト) Windows2037・MacOS21が動作可能なPC。 (注:USB3.1必須。) ・発売予定価格 41,060円(税込) ・発売予定時期 2037年5月 以上 <<トップ へ戻る<<
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戦うことを忘れた武装神姫・番外編 ちっちゃい物研・商品案内-13 <東杜田技研・新製品のご案内-13> 注)当然ですが、以下の内容はすべて当方の脳内生成物であり、 現実には存在しませんので。。。 <東杜田技研・新製品のご案内> このたび、弊社の小型ロボット向けコスメブランド「T3」では、 近年 人気が高まっております「武士神姫」向け商品を開発、シリーズ名 「T3-乙女志向」として展開することになりました。 まず第一弾として「ボディーソープ」・「シャンプー」・「リンス」を発売 いたします。 〜「T3-乙女志向 ・ 神姫ボディーソープ・ 神姫シャンプー・神姫リンス」の特徴〜 ■各種小型ロボット向けのメンテナンス用品開発で定評のある当社 T3チームが総力を挙げ、小型機械技術研究製作部とも連携して 開発された、神姫向けのボディーソープ。 ■またシャンプーとリンスは当社T3チームと某大手化粧品メーカー との共同開発。 神姫の人工毛髪と抜群の相性を誇ります。 ■中性かつ低浸潤性ながら、強力樹脂クリーナー以上の洗浄力。 もちろん、神姫本体のペイントを侵すことはありません。(註1) ■敏感なフェイス部分にも安心してお使いいただける、独自の配合。 もちろん、オーナー様ご自身にもお使いいただけるよう、各種の 規制に適合させております。 一緒のお風呂・シャワーの際には ぜひお試しください!! ■神姫が嫌がることの無いように、独特の芳香剤を配合。洗浄後に は、ほんのりといい香りも漂います。 ■シャンプーとリンスは、各3種類を用意。お手元の神姫との相性や 香りによって選ぶ事が出来ます。 ■専用ボトルには、オーナー様が使う通常のポンプのほか、神姫用 の小型ポンプも装着されており、神姫自身がひとりで洗浄される 際にも安心の設計。 ■シャンプーが苦手な神姫のために、同時にシャンプーハットも発売。 5色を用意、お好きなものをお選びいただけます。 (註1)純正塗色は問題ありませんが、リペイントに関しましては 保障対象外とさせていただきます。 詳細は、下記を参照して下さい。また、新たな情報は随時公開いたし ますので、HPにてご確認下さい。 <T3-乙女志向 「神姫ボディーソープ」> ・天然由来の香料とボディの艶出し成分を配合。 ・500mLボトル(ポンプ2種付き) ・500mL詰め替え用リサイクルポリ容器入り ・別売りボトル <T3-乙女志向 「神姫シャンプー」> ・ストレート、ダメージケア、トニックタイプの計3種類。 ・それぞれに、天然由来の香料配合。 ・500mLボトル(ポンプ2種付き) ・500mL詰め替え用リサイクルポリ容器入り ・別売りボトル <T3-乙女志向 「神姫リンス」> ・ストレート、モイスト、ダメージケアの計3種類。 ・それぞれに、天然由来の香料配合。 ・500mLボトル(ポンプ2種付き) ・500mL詰め替え用リサイクルポリ容器入り ・別売りボトル <T3-乙女志向 「神姫シャンプーハット」> ・ピンク・水色・黄緑・黄色・白の計5色。 ・徳用詰め合わせ10枚セットもあります。 ・発売予定時期 (全商品・今夏予定。初回生産分のシャンプーには、 シャンプーハットが付属する予定です。) 以上 <<トップ へ戻る<<